経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で震災復興特別委員会(榊原定征委員長、岩沙弘道共同委員長)を開催し、前復興大臣の根本匠衆議院議員・自民党東日本大震災復興加速化本部常任顧問から、復興の加速化について説明を聞くとともに懇談した。
■ 三つの信条に基づき復興の加速に邁進
根本議員は冒頭、復興大臣在任中に信条としてきたこととして、次の3点に言及。第1が「現場主義の徹底」、被災地ごとに復興状況が異なることを踏まえ、被災地を頻繁に訪問し、現場での問題を随時吸収し施策への反映に努めたとした。第2は「復興庁の指令塔機能の強化」、テーマに関係する各省の局長級を集めたタスクフォース(戦略実行部隊)を創設し、大臣の陣頭指揮のもとに具体的な制度改正・運用の改善を図るなど、政治家が大きな方向性を示し、官僚の政策立案作業を加速させる真の政治主導を実践したと述べた。第3に「復興ステージに応じた取り組みの推進」、住宅再建やまちづくり等において、復興のステージ(時間軸)ごとの課題の具体的かつ横断的な解決を目指した施策パッケージを講じたことを挙げた。
■ 復興の加速に向けた各種取り組みを精力的に展開
続いて、根本議員は、復興の加速に向けた主な取り組みを説明した。
住宅再建・復興まちづくりについては、5弾に及ぶ加速化措置を講じたことで、(1)労務単価の引き上げによる入札不調の解消(2)公務員OB・OGや青年海外協力隊帰国隊員の活用等を通じた被災自治体の人材不足の解消(3)不在者財産管理制度等の円滑な活用による所有者不明等の土地の処理の迅速化(4)都市再生機構(UR)の活用・CM(コンストラクション・マネジメント)方式の導入等による工期短縮(5)農地転用許可の不要化による津波被災地の買取手続きの迅速化――等を実現。用地取得の抜本的改革の成果として、昨年9月に49%であった被災3県の用地取得率が今年6月で約85%、高台移転事業の着工率が9割強を達成したことなどを紹介した。
産業・なりわいの再生では、民の力を引き出すことを重視した施策を展開するとともに、人口減少社会の到来を見据えた産業集積にも挑戦すべきとして、産業復興戦略の策定、復興金融ネットワークの設置、復興・地域活性化ファンド(仮称)の創設等に取り組んだことを紹介した。
福島の再生・復興については、昨年8月の避難指示区域の見直しを受け住民の帰還が進む一方で、引き続き長期避難者支援が重要であるとの認識を示した。
原子力災害による風評被害対策については、被災地産品のさらなる消費拡大を訴えたほか、放射線リスクに関する基礎的情報を作成・活用することで、正確でわかりやすい情報提供を推進したことを強調した。
「新しい東北」の創造では、官民の関係者間で情報共有・情報交換を行う官民連携推進協議会の設立、被災地での事業家に向けたアドバイスを行う仕組み(企業連携・「結の場」)の創設・活用に取り組んだことを紹介した。
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意見交換では、震災復興にかかる記憶の風化防止や風評被害対策等に関し、出席者と率直な意見が交わされた。
このほか震災復興の今後の方向性に関する意見書が審議のうえ、了承された。
【産業政策本部】