東日本大震災後、産業用の電気料金が約3割上昇するとともに、燃料輸入費が高騰、経常収支が3年連続で減少している。このような状況が続けば、経済の好循環に支障が生じることにもなりかねず、エネルギー問題はわが国が最優先で取り組むべき政策課題となっている。そこで経団連(榊原定征会長)は7日、早急に取り組むべきエネルギー政策上の課題および対応に関し、「当面のエネルギー政策に関する意見」を取りまとめ、公表した。概要は次のとおり。
■ 原子力発電所再稼働プロセスの加速
原子力はエネルギー安全保障や経済性ある価格での電力供給確保の観点から重要なエネルギーである。政府は原子力の必要性に関し、国民に向けてわかりやすく説明するとともに、安全性の確保を大前提に、原子力発電所の再稼働プロセスを最大限加速すべきである。
■ 地球温暖化対策税の抜本的見直し
石油石炭税に上乗せするかたちで2012年10月から段階的に施行されている地球温暖化対策税は、エネルギーコスト上昇に拍車をかけ、経済の足かせになると懸念されている。また、一般会計に留保されて地球温暖化対策に活用されていない税収があることなどから、課税の必要性に疑義が生じており、課税の廃止を含めた制度の抜本的見直しが必要である。
■ 再生可能エネルギー導入策の見直し
再生可能エネルギーはエネルギー安全保障や地球温暖化防止の観点から重要なエネルギーである。しかし、今年6月末までに認定された設備がすべて運転を開始した場合、賦課金だけで年間に約2兆7千億円の国民負担が発生する。現行の固定価格買取制度は合理性を欠いている点もあり、政府は現行法のもとで可能な措置を早急に講じるとともに、制度を抜本的に見直すべきである。
■ エネルギーコスト削減に向けた取り組み支援策
エネルギーコスト上昇に歯止めがかからないなか、国全体で企業の省エネ・創エネ設備導入支援策を拡充する必要がある。こうした観点から経団連では、企業のエネルギーコスト低減のために必要な方策について会員企業・団体から意見を募集した。その結果、「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金制度」の利便性向上、グリーン投資減税の期限延長等の回答が寄せられた。これらの早期実現が必要である。
■ 電力システム改革
現在、政府において議論が進められている電力システム改革には、さまざまな懸念がある。まず、諸外国の事例に鑑みれば、自由化により電力価格が上昇する可能性が高い。また、大規模投資が必要となる電源や低い稼働率しか見込まれない電源への投資が不足するおそれがある。発電事業者の資金調達が円滑になされるかどうかも懸念される。制度設計において、これらの懸念が払拭される必要がある。
◇◇◇
ここで述べた当面の取り組みに加え、中長期的な課題として、エネルギー・ミックスやエネルギー政策を踏まえた温室効果ガス削減目標の策定といった取り組みが必要となる。経団連としては、低炭素社会実行計画の着実な推進を通じ省エネ・低炭素化に努めるとともに、政府が責任あるエネルギー政策を構築するよう働きかけていく。
※全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/081.html 参照
【環境本部】