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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年10月30日 No.3198 第8回関西企業倫理セミナー開催 -「企業倫理徹底に向けた経営トップの役割」/久保利弁護士が講演

講演する久保利氏

経団連は「企業倫理月間」の一環として21日、大阪市内で約220名の参加者を得て、第8回関西企業倫理セミナーを開催した。

開会にあたり、企業行動委員会の西川修企画部会長が、企業倫理の徹底と社会的責任の推進を徹底すべく、事業活動全般の総点検を行うとともに、体制を強化するよう呼びかけた。

続いて日比谷パーク法律事務所の久保利英明代表・弁護士が「企業倫理徹底に向けた経営トップの役割」と題する講演を行った。講演要旨は次のとおり。

■ 「性弱説」で考える

日本の企業では、従業員を性善説でとらえていたために、悪意をもって行われる不正行為を防ぐことができなかったというケースが多いが、これは時代錯誤であると思う。人間というのは“魔が差す”弱い生き物であるという「性弱説」の認識を持ってほしい。弱い人がふとした悪意を持ってしまったときに、それを行動に移さずに済むような仕掛けを企業がつくることが必要である。

■ 不祥事の原因と対策

不祥事の原因として、次の三つが挙げられる。一つ目は、ミッション(使命)を忘れた利益優先主義である。企業は利益を上げるために存在しているのではなく、それぞれが社会のなかでのミッションを持っている。企業がそのミッションを追求していけば、その先にガバナンスもコンプライアンスもついてくるはずである。

二つ目は、なれ合い、もたれ合い、空気を読む文化が強くなりすぎて、「自主独立の個」が確立していないことが挙げられる。以前の日本では、個の確立が存在したうえで、それぞれが切磋琢磨し、「空気をつくる」ことができていたと感じている。慣習や固定観念にとらわれず、組織運営における論理性や合理性、多様性を尊重する文化を持つことが重要である。

三つ目は、日本の組織の特徴として「業務執行者」が「監督監視」に優先するという考え方が挙げられる。本来、ガバナンスというものは、業務執行者である社長を縛るものである。優れた経営者は企業のミッションは主権者たるステークホルダーに決めてもらうという姿勢を持っている。社外取締役の役割は、業務執行とは異なる目線で経営を監視し、経営者とともに企業のミッションについて議論をし、正しい方向性を保つことにある。

■ 不祥事から得られる教訓

多くの企業が「現場は優秀」との認識を持っているが、コンプライアンスという観点からは、現場は決して優秀とはいえない。コスト削減や品質改良などの社内的な要請には応えているが、コンプライアンスとは社会からの要請にどう応えるかということである。この社会からの要請に対し、敏感であり、可変的でなければ、現場力が高いとはいえない。

また、経営トップのリスク感覚が時代にそぐわず、企業倫理や法令遵守を社内に浸透させる実行力が低下している。このことは、社内で発生した問題について、その本質を理解できず、適切な指示を行わないことや、不祥事の発生に際して、クライシスマネジメントに失敗し、危機を最小限に抑えることができないことに顕著に表れている。

■ グループ経営と事業会社のコンプライアンス

近年の不祥事は、ホールディングス傘下の事業会社で発生しているケースが多い。これらの事業会社は業法を含む個別法による規制がかかるため、自ら事業運営をしないホールディングスよりもコンプライアンス・リスクは高い。また、上場していない事業会社に対し、社外取締役や常勤監査役を規定する法律が現状存在していない。このため、事業会社のガバナンスが名目的となるリスクも高い。事業会社における不祥事を防止するには、ホールディングスの役員がグループ・コンプライアンスとして、事業会社の内部統制までカバーする必要がある。

【政治社会本部】

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