企業の海外展開が進むなか、わが国企業においても競争法(独占禁止法)に違反したとして、海外の競争当局に摘発される事例が増えている。さらに、こうした刑事訴追や行政措置のみならず、当局により競争法に違反したとされた企業が、カルテルなどの競争法違反行為により不当に高い値段で商品等を購入させられたとして、消費者や取引先から民事賠償を求められるケースも米国を中心に増加しており、注意が必要である。
そこで経団連は10月23日、東京・大手町の経団連会館で「競争法と民事賠償に関する国際コンファレンス」を開催し、欧州、米国、オーストラリア、日本における法制度の違いなどについて、各国・地域で活躍する弁護士に説明を聞いた。
■ 基調講演
コンファレンスの冒頭、バンバール&べリス法律事務所のジャン・フランソワ・べリス弁護士、矢吹法律事務所の矢吹公敏弁護士が基調講演を行った。
べリス弁護士からは、競争法違反を理由とした民事賠償請求制度に関し、昨年6月に公表されたEUの指令案について、その背景や内容等について紹介があった。これまでEUでは、カルテル行為が認定されたにもかかわらず、損害賠償請求に至るケースが少なく、被害者による損害賠償請求をしやすくするためのルール変更が予定されている。具体的には、(1)証拠開示手続き(2)加盟諸国の当局による決定の拘束力(3)損害賠償の認定(4)損害賠償額の立証責任の軽減(5)時効――の観点から見直しがなされることとなっている。
矢吹弁護士からは、EUをはじめ世界各国において、証拠開示や原告の主張立証責任の負担の軽減等、民事訴訟を起こしやすい制度が構築されつつあるとの説明があった。そのうえで、これらを踏まえ企業は、(1)書類の管理(2)当局への書類の提出(3)証人の確保(4)和解のタイミング――などについて、十分に留意しなければならないと指摘した。
■ パネルディスカッション
基調講演の後は、矢吹弁護士がモデレーターとなり、EUについて、バンバール&べリス法律事務所のクリス・ヴァン・ホフ弁護士、米国について、ギブソン&ダン法律事務所のジョエル・サンダーズ弁護士、オーストラリアについて、コールスチャンバースウェストガース法律事務所のエイマン・ギアギス弁護士、日本について、西村あさひ法律事務所の川合弘造弁護士がパネリストとなり、パネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、立証責任、証拠開示制度、訴訟にかかる期間・コスト、損害賠償額の認定(特に間接購買者が請求しうる額)などについて、各国・地域における違いを各パネリストが説明した。
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経団連では、こうしたシンポジウムなどを通じ、海外における制度の動向等について、今後も会員企業に情報提供を行っていく。
【経済基盤本部】