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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年12月4日 No.3203 「近未来の農業・農村と農政の課題」聞き意見交換 -名古屋大学大学院の生源寺教授から/農政問題委員会企画部会・農商工連携部会・国際関係部会

農林水産省では、国の農政の5カ年計画である「食料・農業・農村基本計画」の年度末の改訂に向け議論を深めている。経団連においても、同計画への経済界の意見の反映に向けて、1月に提言を取りまとめるべく検討を重ねている。

そこで経団連は11月19日、東京・大手町の経団連会館で農政問題委員会企画部会(佐野泰三部会長)、農商工連携部会(川面克行部会長)、国際関係部会(青木芳久部会長)の合同部会を開催し、名古屋大学大学院生命農学研究科の生源寺眞一教授から「近未来の農業・農村と農政の課題」について説明を聞いた。なお、当日は提言骨子案についてあわせて議論した。

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生源寺氏は冒頭、昨今の農政の動向に関し「二度の政権交代によって生じた農政の理念をめぐるブレや施策の不整合を是正する取り組みが一定程度進展している。また、産業競争力会議などの問題提起を受けるかたちで、官邸主導による農政の転換を図る動きも活発化するなど、これまでになかった経過をたどっている面もある」と指摘。

そのうえで、わが国の食料・農業・農村の基本問題として、農業資源の退潮に歯止めをかけ回復・再生を図るべきとして、食料自給力や水田農業のあり方などに言及。さらに8割以上が食品・外食産業の加工による付加価値であることを踏まえながら「土地利用型農業と集約型農業の組み合わせや加工・流通・外食への多角化等により、農業経営に厚みを持たせることが、持続的な成長のポイントである」とした。さらに「高齢の農業従事者のリタイアに伴い貸出農地が急増するなか、農地を引き受ける担い手を確保することが不可欠である」と述べた。

また生源寺氏は、今後の農政の課題や政策のあり方について説明。財源の活用に関しては「農業の生産性向上・競争力の強化、国民負担の軽減につながるよう財源を活用することがポイント。消費者・納税者の観点から、納得いく政策であるかも重要」と指摘。さらに、今後の農政のあり方について、「持続可能な農業に向けて必要なことは、日本の農業で可能なことと不可能なことを見極めることである。法律と矛盾・競合する施策がこれまで講じられてきたが、中長期的にこうしたシステムから脱却することも課題」と述べ、国全体として農業政策の一貫性・整合性を担保することが重要と強調した。

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説明後の懇談では、「農業政策においてベンチマークとなり得る国はどこか」との質問に対し、生源寺氏は、「政策の一貫性という意味では、EUが参考になる。ただ、日本が農業で抱える問題を考えるうえでモデルになるような国はない。先進国として初めて経験するケースであり、われわれが解決策を見いだせばよい教訓となろう」と答えた。

【産業政策本部】

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