経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は11月7日、渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(千葉市)を訪問し、スーパーグローバルハイスクール(SGH)(注)としての取り組みを聞くとともに、今後の高校教育の課題について田村聡明副校長、小河文雄教頭らと懇談した。
■ 自調自考の力を伸ばす
創立30周年を迎えた同校の教育理念は「自調自考」。自ら調べ、考える力を養成し応用力を伸ばすことを重視し、授業においても、生徒自らが課題を発見し分析することや、単なる英語力ではなく、英語で討論しながらwin-winの妥結点に至る交渉力を育む教育を推進している。今年度から文部科学省が開始したSGHの指定を受け、同校では「多角的アプローチによる交渉力育成」という構想を掲げた。この一環として「食」をテーマにした課題研究と英語での発信力強化に取り組み、5年後には、海外の高校生を招いて「食」に関するさまざまな視点で国際会議を開催することを目指している。
今回視察した情報処理の授業(高校1年)では、「身近な問題とその解決」をテーマにミニ学会形式のプレゼンテーションが行われていた。生徒たちは、日ごろ身の周りで起こっている問題からグループごとにテーマを決め、その問題の分析や原因を調査した後、解決策を討議して1枚のスライドにまとめ発表。発表を聞く側の生徒は、その情報の信憑性が検証されているか、主張に独創性があるか、説明がわかりやすかったかなどの視点で評価を行っていた。
また、ネイティブ教員と日本人教員によるデュアルティーチングを導入した同校独自のカリキュラム「英語表現II」の授業視察後、豊島幹雄国際部長から、「グローバル人材に必要な資質・能力を身につけさせるため、外国人教員による少人数制授業や帰国子女・外国人生徒の受け入れ、多様な国際体験を目的とした長期・短期の海外留学の奨励、海外大学進学へのサポート、海外大学等と連携したリーダーシッププログラムの実施などを行っている」との説明があった。
■ 主体的に活動できる機会や環境の提供が重要
懇談では、「グローバル人材の育成に重点を置くことで、受験指導を最優先にした高校教育も変わっていくのではないか」との経団連側の質問に対し、田村副校長は、「教育再生実行会議や中央教育審議会で1点刻みではない多面的・総合的な大学入試への移行が検討され、東京大学でも推薦入試が導入されるが、従来の入試のかたちがすぐに変わるとは考えにくい。『高校から変わる』という発想は難しく、受験競争がある以上、当校でもそれに対応したサポートは不可欠」との認識を示した。
一方、グローバル人材育成に向けた課題については「生徒自らが学習する姿勢を育てることで、生徒自身がもつ能力を最大限に引き出すことができる。今後も生徒が主体的に活動できる機会や環境を可能な限り整えていきたい」と語った。
(注)スーパーグローバルハイスクール(SGH)=国際社会で活躍できるグローバル・リーダーを高校時代から育成するため、文部科学省がその育成に取り組む先進的な高校を選定。今年度は56校が指定を受けた
【社会広報本部】