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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年1月22日 No.3208 マイナンバー導入における企業の実務対応<6> -企業年金と健康保険組合

富士通総研経済研究所主席研究員
榎並利博

民間企業でも、マイナンバーを業務利用する個人番号利用事務実施者となる特殊な場合がある。これは確定給付企業年金法や確定拠出年金法によって規定された事業主で、従業員の企業年金の管理にマイナンバーを使わなくてはならない。民間の企業年金では、加入者と連絡が取れずに給付金が給付できないケースが発生しているが、このような状況を改善していくためである。

確定給付企業年金法に該当する事業主は、老齢給付金や脱退一時金の支給についてマイナンバーを使って管理していく必要があり、確定拠出年金法に該当する事業主は企業型記録関連運営管理機関への通知、企業型年金加入者等に関する原簿の記録や保存、企業型年金の給付や脱退一時金の支給に関してマイナンバーを使って管理していくことになる。

この企業年金について、最近になって政府から「番号制度施行当初からの個人番号の利用は見送ることとしている」という文書が提示され、マイナンバーの利用開始時期は2016年1月から後ろにずれ込むことになった。

しかし、この事務は個人番号利用事務であるため、行政機関や次に述べる健康保険組合と同等の準備作業が要求される。あらかじめどのような準備が必要なのか、今のうちに把握して体制を整えておく必要があるだろう。

次に、企業が健康保険組合を設立している場合、その健康保険組合は個人番号利用事務実施者となることに注意が必要だ。健康保険組合は被保険者や被扶養者の管理情報にマイナンバーを設定し、保険給付の支給や保険料の徴収事務においてマイナンバーを使っていくことになる。

健康保険組合は、行政機関などと同様に情報提供ネットワークシステムに接続し、他の機関と個人情報をやり取りすることになる。そのためには、情報提供ネットワークシステムの中間サーバー(国が用意)とのインターフェースを構築し、住基ネット連携サーバーを設置して中間サーバー上の個人情報に符号を貼り付け、その個人情報(医療保険給付関係情報)を定期的に更新するという既存システムの改修作業も発生する。

さらに、健康保険組合(単一組合を除く)は、特定個人情報保護評価を実施しなくてはならない。これはマイナンバー法で規定され、個人情報保護の措置を行うべく、マイナンバーを含む個人情報を扱うシステムを開発する前にこの評価作業を実施し、国民に公示して特定個人情報保護委員会の承認を受けることになっているからだ。

健康保険組合の情報提供ネットワークシステム接続
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次回(最終回)は「民間ビジネスへの影響」について解説する。

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