政府は総合資源エネルギー調査会の下に「長期エネルギー需給見通し小委員会」を設置し、エネルギーミックスの検討を開始した。エネルギー政策は国民生活や経済活動にかかる重要分野であり、そのなかでも原子力は大きなテーマである。
そこで経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(鯉沼晃部会長)を開催し、資源エネルギー庁の畠山陽二郎原子力政策課長と小林大和放射性廃棄物等対策室長から、今後の原子力政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 原子力政策全般
(1)わが国のエネルギー需給構造が抱える課題と原子力の位置づけ
東日本大震災後のエネルギー制約により、海外からの化石燃料依存度の増加、燃料費の上昇等の結果、一般家庭等の料金は震災前に比べて約2割上昇している。電力各社の電気料金値上げ幅は各社努力により抑えられているが、前提として原子力発電所の再稼働を織り込んで算定したものであり、再稼働が遅れると、その前提が崩れる状況にある。(2)原子力発電所再稼働
川内原子力発電所と高浜原子力発電所が再稼働プロセスにおいて先行している。(3)原子力政策の見直し
原子力発電依存度を可能な限り低減させるとの方針のもと、廃炉を円滑かつ安全に行っていく。それに伴い、放射性廃棄物の処分場確保、廃炉に伴う事業者の会計上の処理、原子力発電所立地地域の経済・自治体財政への影響といった課題への対応が必要となる。
電力システム改革で競争環境が進展することで、投資回収の予見可能性を確保していた地域独占・総括原価料金規制が撤廃されることとなる。そうしたなか、事業者による廃炉判断の先送り、電力供給の不安定化等が生じないようにすることが重要である。
使用済燃料については、貯蔵能力の拡大、六ヶ所再処理工場等の諸事業の推進、プルサーマル等プルトニウムの適切な管理・利用といった取り組みが求められている。
■ 高レベル放射性廃棄物の最終処分
使用済燃料は再処理され、残った廃液(高レベル放射性廃棄物)をガラスで固め、処分することとなっている。高レベル放射性廃棄物は約1万年にわたり閉じ込めておく必要があり、地下深部に埋めて処分する方法が国際的に採用されている。
これまで公募によって最終処分地の選定を進めようとしてきたが、初期調査にすら着手できていない。そこで、国が科学的有望地を提示し、理解活動を行ったうえで調査を申し入れるプロセスに変更した。
現在、総合資源エネルギー調査会の検討を踏まえて科学的有望地の基準等を検討している。こうした政策等について、自治体と対話を重ねるとともに、全国での理解醸成のため、シンポジウムの開催やメディアを通じた情報発信等に取り組みたい。
【環境本部】