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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年2月26日 No.3213 「健康経営・健康投資推進セミナー」を開催 -企業活力のカギは従業員の健康管理にあり

「健康経営・健康投資推進セミナー」

経団連は1月28日、東京・大手町の経団連会館で「健康経営・健康投資推進セミナー」を開催した。近年、企業が従業員の健康増進を経営課題ととらえ、積極的に関与し、生産性向上につなげる「健康経営・健康投資」の考え方が注目されている。同セミナーには、企業の人事担当者など約280名が参加し、浅野友靖・経団連社会保障委員会企画部会長の進行のもと、政府の施策や各企業における推進体制のあり方、先進事例などを聞いた。

■ 政府説明 「政府の取り組みとデータヘルス計画について」

冒頭、経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課長の森田弘一氏から、健康経営・健康投資の推進に向けた政府の施策について説明があった。森田氏は、「健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みを『投資』ととらえ、経営的視点から考えて戦略的に実践することである。この考え方をご理解いただくとともに、積極的な取り組みをお願いしたい」と要望。あわせて、政府の取り組みとして、健康経営銘柄の設定や健康投資ガイドブックの説明があった。

続いて、厚生労働省保険局保険課長の鳥井陽一氏がデータヘルス計画の推進について説明。データヘルス計画は、レセプト・健診情報等のデータ分析に基づいた効率的・効果的な保健事業を、PDCAサイクルを回しながら実施するための事業計画であり、来年度からすべての健保組合において実施が義務化される。鳥井氏は、データヘルス計画の推進にあたり「健保組合と事業主が一体的に保健事業を行う『コラボヘルス』が成功のカギと見ている。事業主には積極的に関与いただきたい」と要請した。

■ 講演 「コラボヘルスの進め方―健康経営を前提として」

森氏

産業医科大学の森晃爾教授は、仕事に対して「活力」と「熱意」を持ち、「没頭」できている「ワーク・エンゲージメント」の状態にある従業員の割合が、日本企業は諸外国に比して低いことを問題指摘した。また、再雇用を含む定年延長によって高年齢の雇用者が増える一方、年齢を重ねるにつれて個人の健康づくりの努力が健康レベルに直結しやすくなる傾向があるため、組織全体での健康づくりが今後一段と課題となっていくとの見通しを示した。そのうえで職場での健康づくりの目的を「健康問題による損失の回避」だけでなく、あわせて「従業員の仕事と人生のパフォーマンスを高めること」とし、取り組みの方向性で(1)ストレス耐性を高める生活習慣(2)集中力、生産性を高める生活習慣(3)長期に働くことができる健康管理――の3点を挙げた。

また森氏は、出席した各企業への要望として、取り組みを進める体制整備において、経営層のなかにCHO(Chief Health Officer)のような健康経営に関する責任者を任命することを強く求めた。これは組織の健康問題が、1名のメンタルヘルス不調者といった上司がマネージできるレベルから、一つの部署、さらには組織全体のパフォーマンスの低下といった人事や経営層によって解決しなければならないレベルまで、かなり広範に及ぶためである。

さらに、森氏は取り組み体制のなかに産業医をはじめとした専門家を配置することも要望した。なお、この専門家は産業医に限る必要はないが、幅広い健康施策に優先順位をつけながら、個人情報等の倫理的側面にも配慮して施策を推進できるよう、産業医であっても体系的な研修を修了している必要があるとの認識を示した。

このほか、森氏は、企業への要望としてコラボヘルスの推進を挙げた。また、コラボヘルスを進める際には、健康課題の分析、計画の立案と実施、および施策の効果評価のそれぞれにおいて、健保組合と連携する必要があるほか、企業と健保組合で事務や施策に重複がないよう、両者の擦り合わせが必要と指摘した。

■ 事例紹介

若島氏

コニカミノルタ常務執行役人事統括部長兼同健康保険組合理事長の若島司氏が、同社がコラボヘルスに着手した経緯を紹介した。同社では、従業員の健康問題について、会社では、長時間労働の常態化やメンタルヘルス不調者の増加、生活習慣病とその予備軍の増加が課題となる一方、健保組合では、高齢者医療への支援金や医療費の増加によって財政状況が悪化したと述べた。

こうした状況を受けて、若島氏は、この課題を解決するには、会社、健保組合の二つのリソースを最大限有効活用し、それぞれの強みを活かして取り組まないと解決できないと判断し、会社と健保組合が一体運営で取り組むこととなったと説明。会社側の健康管理を所管する組織の長と健保組合の常務理事を兼務とするワン・マネジメント体制で、健康施策の企画立案に関する機能と、健診運営に関する機能が一体的に運営されている。

具体的な取り組みとしては、健康第一の組織風土醸成を目的とした経営トップによる「健康宣言」の発信に始まり、グループ会社間でばらばらであった健診運営や健康管理システム等の仕組みの統一化を図ったと紹介した。

ただ、若島氏は「目に見える成果が十分に出ているわけではなく、さらなる取り組み強化が求められる」と強調。今後、健康中期計画(2014~16年)に基づき、データヘルス計画を進めながら、フィジカル・メンタル両面で個別指導を強化し、リスク者をミニマイズ化するほか、従業員の健康状態の「見える化」を進め、個人・組織レベルでの健康づくりを推進するとしている。なお、データヘルス計画を進めるにあたり「健診結果やレセプトデータ等の個人情報の活用は不可欠だが、デリケートな性質であるため取り扱いの課題は多い」との認識を示した。

【経済政策本部】

健康増進支援サービスに関するパネル展示を同時開催
~健康管理ソフトやデータヘルス計画の策定支援などを紹介~

今回、「健康経営・健康投資推進セミナー」の開催にあわせ、会場ロビーにおいて、従業員の健康増進支援サービスを提供する企業によるパネル展示を実施。出展企業18社が、それぞれのブースでポスターやパンフレットのほか、各種の支援ツールを実際に用いながら、セミナー参加者に対し個別に情報提供を行った。

具体的には、健康管理ソフトやアプリなどを活用した特定保健指導や生活習慣改善プログラム、健康意識醸成やメンタルヘルス対策に資する従業員向け研修、データヘルス計画の策定支援や集積したレセプトデータの活用策、ジェネリック医薬品の利用推進策など、各社が展開する支援サービスの内容や事業概要を紹介した。

<出展企業一覧>

イーウェル/NTTデータ/LSIメディエンス/オムロンヘルスケア/芸術造形研究所/コガソフトウェア/全国訪問健康指導協会/タニタヘルスリンク/データホライゾン/東邦ホールディングス/日京クリエイト/日本調剤/日立システムズ/日立製作所/日立ソリューションズ/ベネフィットワン・ヘルスケア/ユーエスキュア/ルネサンス(五十音順)

【経団連事業サービス】

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