Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年3月26日 No.3217  都市住宅政策再構築に向け必要な政策聞く -住宅政策委員会

わが国の人口構造は人口減少局面を迎え、新たな課題として、都市部での空き家の増加や郊外団地の高齢化への対応が浮かび上がっている。

そこで、経団連は6日、都内で住宅政策委員会(宮本洋一委員長・鈴木伸弥共同委員長)を開催し、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の平山洋介教授から、「都市住宅政策の再構築に向けて」と題し、住宅市場の構造的な変化や、今後必要となる政策の方向性について聞くとともに意見交換を行った。平山氏の説明の概要は次のとおり。

■ 住宅市場の現状と課題

日本は、人口増と経済成長に伴い、新規住宅の建設と都市の整備を進めてきたが、今後見込まれる人口減少、少子高齢化の進展を踏まえ、従来型の政策の転換が必要な時期を迎えている。

これまでは新規住宅の建設促進が景気対策の一つの柱になることが多く、税制優遇措置などが設けられてきた。しかし、現在の住宅着工戸数はピーク時の200万戸近くから、約90万戸まで減少しており、人口動態や世帯・家族形成の変化等を踏まえると、今後さらに減少すると考えられる。

一方、欧米では、中古住宅市場が充実しており、住宅関連投資におけるリフォーム投資が新築投資より多く、これが住宅市場全体を牽引してきた。今後は、わが国に現存する約5000万戸の中古住宅を活用していく方策を考えていく必要がある。

■ 若年層の住宅取得支援の必要性

現在、若年層の持ち家率が急激に減少しており、その原因として世帯年収の減少に加えて、未婚率の上昇や親の家に住み続ける単身者の増加が挙げられる。企業による住宅補助が他国と比較し充実している一方で、政府による補助は十分ではなく、「親の家を出る」というインセンティブが機能しにくい。

■ ライフスタイルの多様化への対応

かつてのような「郊外に一戸建てを購入し、夫が外で働き、妻は家事を担う」といった画一的なモデルはもはや世間の共通認識ではなくなっている。むしろ、女性の社会進出に伴う共稼ぎ世帯の増加や、高齢者等の単身世帯の増加といった、ライフスタイルの多様化への対応が迫られている。

加えて、寿命が延びることにより、郊外の団地や一戸建てに住む高齢者の住み替えニーズも高まっている。今後は、定年退職後約30年間の生活を、住宅資産活用や住み替えで支えていくためにも、中古住宅市場の充実が必要になる。

<意見交換>

委員からは、「オフィスビル建設の場合は将来のリニューアルを想定した設計を提案するが、住宅の場合は難しい」「住宅の選択には文化・生活的側面も重要で、顧客の個別ニーズに対応してデザインすることが多い。したがって新規住宅の汎用性は必ずしも高くないため、住宅メーカーはリフォームが容易な構造にするなどの工夫を進めている」「一つ一つの中古住宅でみるのではなく、自治体と共に取り組む郊外団地再生の事例のように、街全体で住宅市場のあり方を考えていく必要があるのではないか」などの発言があった。

【産業政策本部】