経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で企業会計委員会企画部会(久保誠部会長)を開催し、国際会計基準審議会(IASB)のハンス・フーガーホースト議長から、国際会計基準(IFRS)の動向等を聞き、意見交換を行った。
フーガーホースト議長は冒頭、「日本では、IFRSの任意適用企業が70社を超えるまでに急拡大し、その株式時価総額は100兆円を超えるまでになっており、大変喜ばしい」と述べたうえで、IFRSの開発動向について次のとおり説明した。
(1)開示プロジェクト
IFRSの過剰な開示を抑制するために、「10ポイント・プラン」を進めている。(2)収益認識
基準開発は終了し、米国財務会計基準審議会(FASB)とのコンバージェンスが達成された。現在は、円滑な適用のために、マイナーな論点の明確化の作業を行っている。適用日については、当初は2017年1月を予定していたが、FASBは1年間適用日を遅らせることを決定したので、IASBとしても適用日を1年間延期する可能性が高い。(3)リース
すでにIASBでの実質的な審議は終了した。FASBと完全なコンバージェンスには至らなかったことは残念だが、貸借対照表へのオンバランスでは完全なコンバージェンスが達成されている。(4)のれんの会計処理
「償却+減損アプローチ」と「減損のみのアプローチ」の両論が聞かれており、基準開発に入る前に、再度リサーチを行う予定。(5)概念フレームワーク
15年第2四半期には公開草案を公表する予定であり、純利益を重視する日本の考え方を反映したものになっている。(6)保険契約
9月か10月に審議を終了し、16年の早い時期に最終公表する予定。
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意見交換に先立って、経団連から、フーガーホースト議長に次の4点を要望した。
(1)「収益認識」について、IASBとFASBとで適用日を違えるべきではない。
(2)「リース」について、IASBとFASBとで異なる基準となったことは残念だ。今後も、コンバージェンスの努力を続けてほしい。
(3)「のれんの会計処理」については、「償却+減損アプローチ」を前提に、基準開発に進むべきだ。
(4)「概念フレームワーク」については、日本が要望している「純利益概念」の定義づけの努力を続けるべきだ。
<意見交換>
意見交換では、参加者から、「『開示プロジェクト』について、財務諸表作成者の負担になる提案がなされており、不満だ」「『保険契約』について、日本の保険会社が開発する商品の実態を表す基準にはなっておらず、日本の保険業界の意見をもっと聞いてほしい」「IASBは、高品質な国際基準の実現のために、企業経営の観点を積極的にIFRSの開発に取り込んでほしい」といった意見が出された。
【経済基盤本部】