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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月22日 No.3243 21世紀政策研究所が会員企業向け研究会を開催 -日韓関係を多角的に分析

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)では、研究成果をタイムリーに会員企業に公表する観点から、これまでエネルギーや日米関係に関する研究会を開催している。同研究所は2日、これらの研究会および「日韓関係に関する研究」(研究主幹=深川由起子・早稲田大学教授)の一環として、10月末に経団連が開催予定の韓国経済界(全国経済人連合会)との懇談を念頭に、会員企業を対象とした研究会を開催した。深川研究主幹をはじめとする3名の研究者が出席し、韓国の経済・政治・社会情勢および日韓関係の現状について説明した。概要は次のとおり。

■ 韓国経済(深川由起子・21世紀政策研究所研究主幹)

韓国の経済不振はチャイナショックによる一時的なものではない。その背景には(1)生産性の向上を上回る正規職の賃金上昇(2)急速な企業財務の悪化(3)拡大が続く家計債務(4)強まる財政の制約(5)急速に進む高齢化と福祉支出の拡大――の5つの構造化した問題がある。

この経済不振に対処するために朴政権は「労働改革」「教育改革」「公共部門改革」「金融改革」の4大構造改革に取り組んでいるが、政権基盤の強くない朴政権がこれらの改革をすべて実行するのは難しい。IMF危機のような大きな危機がない限り、これらの改革は部分的なものにとどまり、今後も2~3%程度の経済成長が続く可能性が大きい。

■ 韓国政治(小此木政夫・慶應義塾大学名誉教授)

北東アジアでは現在、中国の経済大国化と海洋進出を背景とした新たな国際システムが動きつつある。安保優先で日韓が固く結ばれた冷戦時代の北東アジアの国際システムを第1システム、冷戦的な対立から国際協調に向かい、村山談話、河野談話が出された時代の国際システムを第2システムとすると、これは第3のシステムといえる。

この国際システムの変動のなかで、日韓が別々の対応を行っている。韓国は中韓関係の強化へ動き、日本は日米関係の強化へ動いた。これが、現在の日韓関係悪化の原因である。新しい国際システムに適合した日韓関係を構築するためには、日韓が共に米中の間という地政学的な位置にあり、民主主義・市場経済という普遍的な価値観を持つ先進工業国であるということを認識したうえで、共通の利益、目標を再確認すべきである。

■ 韓国社会(小針進・静岡県立大学教授)

韓国社会を形づくるものとして3つ挙げられる。第1は、道徳志向的なメンタリティーである。日本は反遵法的な行為に嫌悪を感じるが、韓国は反道徳的な行為に嫌悪を感じる。これは対馬の仏像問題によく表れている。第2に、糾弾ジャーナリズムとしてのメディアが挙げられる。韓国のメディアは道徳的な志向に加えて伝達することよりも裁くことに熱心であり、日本に対しても自国の政権に対しても同様である。第3に、時の大統領の姿勢が韓国社会に非常に大きな影響を与えており、朴槿惠大統領の対日姿勢が韓国社会の対日感情に影響している。

右から深川研究主幹、小此木氏、小針氏

【21世紀政策研究所】

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