経団連は「企業倫理月間」の取り組みの一環として10月29日、大阪市内で約220名の参加者を得て、第9回関西企業倫理セミナーを開催した。
開会にあたり、経団連の遠藤則明企業行動・CSR委員会企画部会長があいさつし、企業倫理の徹底に向け、経団連の企業行動憲章等を参考にしながら、グループ企業も含めた事業活動全般にわたる総点検を行うよう呼びかけた。
続いて、郷原総合コンプライアンス法律事務所代表の郷原信郎弁護士が「環境変化への適応としてのコンプライアンスと企業不祥事」と題して講演を行った。講演の概要は次のとおり。
■ 環境変化への適応と「コンプライアンス環境マップ」
最近、国内外で相次いで表面化している重大な企業不祥事は、経営者主導型と現場型に大別できる。前者については、組織の不祥事は組織が「社会の要請に反すること」によって生じ、その不祥事の最大の要因は「環境変化に適応できないこと」にあると認識し、事業のあり方を全体的に見直してみる必要がある。後者については、経営者が業務遂行の現場で起きている問題を把握できるかがカギとなる。
組織が社会の要請に応え、環境変化に適応していくことは当然であるが、実際には容易ではない。なぜなら、第一に、組織は多くの人によって構成されており、さまざまな個性、考え方が混在しているからであり、第二に、組織を取り巻く環境は日々変化し、社会の要請の把握それ自体に困難を伴うからである。
環境の変化を把握するためには、企業活動を取り巻く環境を整理した「コンプライアンス環境マップ」を作成することが有用である。自社の企業活動に対する社会的要請を(1)競争環境(2)情報環境(3)労働環境――等の要素ごとに具体的にとらえ、その変化を把握することによって、不祥事リスクへの感度を高めていくものである。コンプライアンス環境マップを活用し、自社の企業活動をめぐる環境変化に対する大局的な認識を得るとともに、個々の環境要素の変化を把握し、多くの社会的要請にバランスよく応えていくことが不祥事の防止にとっては重要である。
■ クライシスマネジメント(危機対応)
万が一不祥事が発生した場合、危機対応を誤ると、不祥事について世の中から誤解されて不当な批判、非難を受け、予想を超えて大きな問題としてとらえられる可能性がある。
不祥事がマスコミに大きく報道され、重大な事態に発展するのは「問題の単純化」によるところが大きい。例えば、謝罪会見の映像的な効果は極めて大きい。頭を下げる経営トップの映像がメディアで放映された場合、その時点で世の中の善悪の判断が確定する。しかし、謝罪しないとそれ自体が多くの批判を招く。
また、「偽装」「隠蔽」「改ざん」「捏造」といった言葉で批判されると、問題が単純化され、一方的にたたかれることになる。逆にいえば、このような言葉にあたる行為を行わないように企業活動を進めることが重要だということである。
危機対応にあたっては、経営者と広報担当および責任者が発生した問題について共通認識を持ち、相互に連携しながらマスコミや世の中に対応することが求められる。
【政治・社会本部】