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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年11月12日 No.3246 シリーズ「地域の活性化策を考える」 -農業資源を有効利用する経営/21世紀政策研究所

大泉・宮城大学特任教授

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)では内外の学者・研究者など多彩な人材を研究主幹に迎え、経済法制、産業・技術、環境・エネルギー、外交等広範な領域にわたる研究に取り組んでいる。そこで「地域の活性化策を考える」をテーマに、各研究主幹にそれぞれの専門分野からみた「地域の活性化策」を聞いた。第1回は大泉一貫・宮城大学特任教授「農業資源を有効利用する経営」。同氏は、プロジェクト「新しい農業ビジネスを求めて」(2014年度)の研究主幹を務め、近く公表予定の報告書「新しい農業ビジネスを求めて」では、日本の農業はオランダやデンマークのような成熟先進国型農業を目指すべきだと主張している。

◆ 地方の生産性が低すぎる

地方が活性化しないのは、一言でいうと、生産性が低すぎるからです。既得権益の保護が強く、所有と経営の分離ができていません。効率的に生産できる能力を持っている人がなかなか参入できず、ブレークスルーは期待できません。

私が、日本農業のモデルと考えているオランダやデンマークでは、そうした既得権益の問題が少ないので生産性が高く活性化しています。農地所有や漁業権を保持していることが重要なのではなく、それらを有効に利用することが重要といったロジックが地域社会に浸透していけば、地方はどんどん活性化して豊かになっていくと思います。

◆ 農業における変化の兆し

農業での変化の兆しは流通プロセスから生じています。商工業者や流通業者が農業者と連携、フードチェーンを構築する事例がみられるようになっています。業界縦割りを乗り越え、生産性の高い農業をつくる兆しの1つとして評価できます。

フードチェーンをつくると、なぜ生産性が高くなるのか。関係する事業者の相互連携が密になり、農業生産の場では、マーケットから要請される作物の品質などがつくる前に明確になるので、生産は必然的にマーケットインになり顧客ニーズに基づいた生産になります。他の産業の良さにも気づき、技術革新にも謙虚になり、データを把握・駆使し、クリティカルな作業の重点的管理等によって生産性を高めています。

ただ、これには生産性の低い農家の撤退を伴いますが、ビジネスとして実現してみると反対の声はあまり聞かれず、むしろ賞賛の声が聞こえてきます。一部には撤退ではなく、生産性の高い方に引っ張られる農家も見受けられます。政策はこうしたことを邪魔しないことが大切でしょう。

◆ 地域資源の開放と力量のある経営者が必要

地域の資源を有効に利用できる力強い経営の出現が重要です。地域の諸資源を産業の分け隔てなく比較的気軽に利用できる制度にし、有効に利用できる経営者を増やすことが必要と考えています。

わが国の地方には、かつて「名望家」などと呼ばれる経営者がおり、こうしたことを自在に行って地域を支えていたものですが、戦後、名望家はいなくなる一方、業界の縦割りが強くなり、また、私的所有にこだわるようになったため地域資源の有効利用はなかなか実現していません。私は、地方にこそ地域資源の開放と力量のある経営者が必要と考えています。

【21世紀政策研究所】

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