経団連(榊原定征会長)の日本ロシア経済委員会(朝田照男委員長)は2月29日、東京・大手町の経団連会館で来日中のデニス・マントゥロフ・ロシア産業・商業大臣との懇談会を開催し、ロシアの産業政策や今後の日ロビジネスの展望等について説明を聞いた。マントゥロフ大臣の説明概要は次のとおり。
■ 新たな産業政策(特別投資契約)の導入
昨年ロシアで施行された産業政策に関する連邦法は、日本企業に新たな可能性を開くものである。第1に、現在、主に自動車組み立て事業で適用されている「特別投資契約」というスキームをほかの産業分野にも広げていく。第2に、連邦・地方政府と契約を交わした投資家については、関税負担を連邦政府が補償する。第3に、10年の契約期間中に、法律等の変更があっても投資家は契約時の権利等が保護され、不利益処分を受けることはない。第4に、投資企業は連邦・地方政府から利益税の減免を受けられる。
■ 輸入代替策
近年、ロシアは輸入代替策を進めているが、すべての製品・技術をロシア製に代替するものではなく、該当する製品・技術の普及実績等を確認し、必要なもののみピンポイントで代替を図ることを目的としている。決して外資締め出しではないので、引き続き日本からの投資を歓迎したい。
■ 今後の日ロビジネスの展望
日本からロシアへの投資額は累計で約120億ドル、進出した日本企業は270社に上る。この関係を一層強化していくうえで参考になるのは、2013年に安倍首相がロシアを訪問した際、プーチン大統領との間で交わされた日ロ協力の優先分野リストである。リストに挙げられたエネルギー、都市環境、医療等の各分野で具体的な協力プロジェクトがあれば、連邦・地方双方の政府レベルでインセンティブを付与していきたい。
今後ともこのような日ロのビジネス対話を続けることで双方の協力が進展する。具体的な課題については、対話を通じて、迅速に解決策を見いだしていきたい。
「日ロ貿易・産業対話」で朝田日本ロシア経済委員長が講演
同日、「日ロ貿易・産業対話」(経団連、ロシアNIS貿易会、日本貿易振興機構の共催)が都内で開催され、経団連を代表し、朝田照男日本ロシア経済委員長が参加した。
ロシアからの大規模ミッションを含む500名以上の聴衆を集めた同対話において、朝田委員長はデニス・マントゥロフ産業・商業大臣やアレクセイ・レピク露日ビジネスカウンシル議長(実業ロシア会長)らとともに登壇し、日ロ経済関係の拡大と深化に向けた課題や日本経済界の期待について説明した。朝田委員長の発言概要は次のとおり。
■ 日ロ経済関係に関する現状認識
わが国を取り巻く環境が大きく変化するなか、アジア太平洋地域の繁栄と安定を確かなものとするためにも、日ロ経済関係を拡大、深化させることは極めて重要な課題であり、大きなポテンシャルが存在することは疑い得ない。しかし、両国の経済力や市場規模、地理的近接性等を考慮すれば、貿易・投資とも、いまだポテンシャルが十分に活かされているとは言い難い。
経団連が毎年実施している「ロシアのビジネス環境等に関するアンケート」によれば、原油価格下落等に伴う景気低迷、資源に依存する産業構造等の経済的要因のほか、対ロ制裁等の政治的要因も影響し、ロシア・ビジネスを悲観的にとらえる企業が増加している。
■ 真に互恵的・多面的な日ロ経済関係の構築に向けて
こうしたなか、ロシア政府には、「ビジネス環境の改善こそがロシア経済の回復、ならびに日ロ経済関係の緊密化への最善の処方箋」ととらえ、(1)煩雑な許認可手続きなど行政手続きの問題(2)あいまいで不可解な法解釈・運用など法制度の問題(3)不透明で煩雑な輸出入手続きの問題――ほか、日本企業の要望の強い課題の解決に取り組むことを期待する。
【国際経済本部】