Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月17日 No.3262  21世紀政策研究所が名古屋でセミナー開催 -「今こそ必要!経営陣に求められるBEPS対策」をテーマに

21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は10日、名古屋市内で「今こそ必要!経営陣に求められるBEPS対策」をテーマにセミナーを開催した。

BEPSとは、税源浸食と利益移転を意味し、グローバル企業が税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策により税負担を過度に軽減することが問題とされている。OECDはBEPSに対抗する観点から、国際的な課税ルールの調和を図る方向で議論を進め、昨年10月5日に「BEPS最終報告書」(以下、最終報告書)を公表したところである。

同研究所では、3年にわたり、青山慶二研究主幹(早稲田大学大学院教授)を中心に国際租税研究会で精力的にBEPSに関する検討を行ってきた。また、昨年12月には大阪で経営層を対象にBEPS対策をわかりやすく説明するセミナーを開催し大変好評であったことから、今般、名古屋でもセミナーを開催することとした。

講演で青山研究主幹は、経営陣がBEPS対策を把握する重要性を説明した。BEPSに関する議論は、海外の一部の多国籍企業の節度を欠いた節税対策から端を発したため、日本企業にとっては、どこか「対岸の火事」という認識だが、最終報告書の内容は、これまでの国際租税の枠組みを大きく変え、日本企業に対しても重大な影響を与えると指摘。経営陣には、最終報告書の内容に照らし、税務管理強化のための事業構造のあり方を検討することが求められるとともに、場合によっては経営資源の配分を変える必要もあると述べた。特に、日本企業を親会社とする多国籍企業には、海外子会社に裁量を広く与えている企業が多く、本社での中央管理システムを採用していない場合もあるが、新しい枠組みでは、親会社のみならず海外子会社の税務情報も、親会社が課税当局に開示する必要があるため、税務ガバナンス体制を強化する必要がある旨指摘した。

また、日本では、最終報告書を受けて、平成28年度税制改正でBEPS対策の一部を導入するよう進められており、今年4月1日以降に開始する会計年度から、親会社・子会社が所在する国・地域ごとの総収入金額、税引前利益、法人税額等の情報を記載した書面の課税当局への提出が一部の企業に義務づけられる予定と説明した。

質疑応答では参加者から、平成28年度税制改正で課税当局への提出が求められる書類について実務的な質問があった。

同研究所は、経団連と協力して、4月末に解説書として「BEPS Q&A」を出版予定である。また今後は、最終報告書で勧告された内容をOECD/G20各国がどのように執行していくかについて、OECDを中心とした国際社会でなされるモニタリングが非常に重要となってくるため、夏ごろにはOECDとの間で国際課税に関する大規模会議を開催するなど、今後もBEPS対策に関する取り組みを続けていく。

【21世紀政策研究所】