Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月24日 No.3263  門司駐カナダ大使との懇談会開催 -トルドー政権の発足と今後の日加関係

経団連は2月25日、一時帰国中の門司健次郎駐カナダ大使を招いて懇談会を開催し、大使からトルドー政権の発足と今後の日加関係について説明を聞いた。当日はカナダ委員会の村瀬治男・土橋昭夫両委員長、石原邦夫副会長・アメリカ委員長をはじめ約40名が出席し、大使の説明を受け活発な意見交換が行われた。門司大使の説明の概要は次のとおり。

■ トルドー政権の外交・経済政策

昨年10月の連邦総選挙の結果、およそ10年ぶりの政権交代となったカナダ国内では、“Canadais Back”という言葉がしきりに聞かれた。自由党勝利の背景には、トルドー氏の個人としての魅力はもちろん、敵味方を明確に分ける外交を行ってきたハーパー保守党政権に対する批判、すなわち伝統的な多国間主義外交への回帰を求めるカナダ国民の意思があったとの見方もある。

政権交代で最も変わったと認識されているのが外交政策である。トルドー首相は、多国間主義への回帰や国際機関との協調によりすべての国をエンゲージする外交を行うことを表明するとともに、「イスラム国」空爆からの撤退とシリア難民の受け入れ拡大を実行した。貿易面においては、新興市場、特に中国とインドとの関係を重視する旨も表明している。

今後のカナダの経済政策、外交政策においてポイントとなるのは、環境・気候変動への対応であろう。さまざまな政策が、環境への影響を考慮したうえで立案・実施されると考えられることから、特にエネルギー開発事業等にどのような影響が生じるかを注視する必要がある。

経済政策では、前政権が財政均衡を重視したのに対し、トルドー政権は大規模なインフラ整備のために3年間の赤字予算も辞さないとしている。具体的な政策や事業は、予算策定の過程で明らかになるだろう。

TPP(環太平洋パートナーシップ)協定についてトルドー首相は、前政権が合意したものであり精査が必要と表明している。カナダの場合、批准のための国会の同意は必要ないが、今後関係各セクターとの間で透明性をもって協議するとしている。カナダが批准しないとの選択をするとは考えにくく、米国の状況をみつつ批准のタイミングを計るのではないか。

■ 今後の日加関係

日加関係は経済関係の拡大に伴い強まった。残念ながら現在は、往復の貿易額も往来する人の数もピーク時ほど多くはないが、TPPの発効等により今後拡大が期待できる。

今年は日本がG7の議長国であることから、これを機に日加間でもいろいろなことができると思う。日加首脳会談がトルドー首相の就任2週間後に実現したほか、2月12日には、岸田外相が二国間の外相訪問としては20年ぶりにカナダを訪問して、日加共同声明を発表した。

日加両国はしばしば「補完的」な経済関係にあると表現されるが、カナダは資源大国であると同時に先進民主工業国でもある。今後はライフサイエンスなどの新しい産業分野でも日加間の協力が拡大するよう期待したい。

【国際経済本部】