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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年4月14日 No.3266 「IoTで拓く日本の未来と課題」 -東京大学大学院の坂村教授が講演/未来産業・技術委員会、産業競争力強化委員会、情報通信委員会

講演する坂村教授

経団連は3月30日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会(内山田竹志委員長、小野寺正委員長)、産業競争力強化委員会(下村節宏委員長、岡藤正広委員長)、情報通信委員会(内山田竹志委員長、中西宏明委員長、近藤史朗委員長)の3委員会による合同会合を開催した。東京大学大学院情報学環の坂村健教授から、IoT(Internet of Things、注1)の可能性と課題について説明を聞き、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ IoTとオープン化の重要性

昨今、メディアなどでも注目が高まっているIoTは、私が1980年代から提唱してきたユビキタス・コンピューティングと本質は同じである。IoTは社会を大きく変える潜在性を持つが、変えられるかどうかのカギはオープン性にある。その背景には、インターネットのオープン性を基にした技術革新がチャレンジを容易にし、イノベーションの環境整備をもたらしていることがある。

トヨタのカンバン方式(注2)やコマツのKOMTRAX(注3)など、IoTの活用で先行するわが国であるが、技術開発とともに、オープン化に向けた社会制度の改革も同時に進めなければ、他国から後れを取ってしまう。あわせて、サイバーセキュリティ対策はもとより、どのデータをどこまでオープンにするか等のガバナンスも極めて重要になる。

■ プログラミングの重要性

IoTの世界では、現実世界のプログラミングが可能になり、プログラミングの力がより重要となる。必要とされるのは、プログラミングの専門家ではなく、プログラミングもできる特定分野の専門家である。各国でプログラミング教育が「読み書き算盤」と同様に基礎学力として重要視されるようになり、初等・中等段階からの義務教育化も進められている。

■ これからの時代と、「変われる国」への変革

社会の変化はますます加速している。とりわけここ数年のロボットや人工知能の進化は著しく、特定分野に限れば人間よりも優秀になりつつある。それらの高度な技術を基盤として、今後、十数年で社会が大きく変わることが予想されるが、どう変わるかの予想は困難である。

そのため、これからは、プログラミング教育などの「変われる力」を与える教育への改革、新しい雇用と生活保障の枠組みの構築、多くの人がチャレンジできる社会への変革などを通じ、日本も「変われる国」にならなければならない。

また足もとでは、EUを中心に標準を握る体制強化が展開されており、日本の製造業の優位性が大きく揺るぎ始めている。そうした状況に対処するため、わが国でも標準化にかかる体制強化が必要である。

<意見交換>

内山田委員長から「産業界が一体となって研究開発を行う仕組みが必要であると思うが、産業界はどう対応すべきと考えるか」との質問に対し、「ご指摘のとおり。今の産業界は戦う必要のないところで戦っている。日本の未来像を共有し、高いレベルでの業界を超えた連携を図る必要がある」との回答があった。

(注1)IoT=あらゆるヒト・モノ・コトが広範にインターネットでつながることを指す概念

(注2)カンバン方式=必要なものを必要な時に必要なだけつくるという考え方に基づいた生産方式

(注3)KOMTRAX=建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステム

【産業技術本部、産業政策本部】

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