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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年5月19日 No.3270 介護リスクに備える~介護離職を防ぐ職場づくり<3> -両立支援制度の利用実態とニーズ/三菱UFJリサーチ&コンサルティング共生社会室室長・主席研究員 矢島洋子

連載第1回において、今回の育介法改正では、「介護休業」は期間延長ではなく分割取得が可能となること、働きながら介護するための「柔軟な働き方」として、「所定外労働の免除」や「短時間勤務」などは、介護休業の93日間とは別に長く利用できるようになること等を紹介しました。こうした改正の背景には、働きながら介護を担っている人の両立支援制度の利用実態や、どのような働き方を望むかというニーズがあります。

今回は、両立支援制度の利用実態と働き方に対するニーズを紹介します。

◆ 働き方を支援する制度利用

企業が整備する両立支援制度として、代表的なものは「介護休業」と「介護休暇」です。しかし、介護休業を利用している正社員は、男性で4.2%、女性で6.5%にすぎません。介護休暇制度も、ほとんど変わらない利用水準です。最も利用されている制度は、「年次有給休暇」です(男性27.8%、女性31.8%)。次いで、半日単位や時間単位での休暇利用や、中抜け・早退等の対応も利用されています。いずれも、女性に比べて、男性の方がやや利用割合が低い傾向にあります。また、実は、男女ともに、こうした制度を「何も利用していない」という回答が多く男性で55.6%、女性で44.9%を占めています。

介護休業を利用しない理由としては、「長期間休業する必要がなかった」が最も多く約4割を占めますが、「自分の仕事を代わってくれる人がいなかった」(19.7%)、「制度を利用しにくい雰囲気がある」(18.5%)という回答も少なくありません。制度の利用実態としては、長い休みを取らずに両立している人も多い一方、ちょっとした休暇を取るだけでも職場に気を使ってしまい、そのために「介護」と名のつく休暇が取りにくい、という状況もあるようです。

◆ 希望する働き方

それでは、仕事と介護を両立するために、どのような働き方が望ましいかというと、最も多い回答は、「必要な時に1日単位の休暇が取れる」、次いで「半日単位の休暇が取れる」「時間単位の休暇が取れる」となっています(図表参照)。1年単位や1カ月単位の長い休業よりも、短い単位の休暇や「中抜け」「始業終業時間の変更」「短時間勤務」等の柔軟な働き方が望まれていることがわかります。これは、前回紹介した「就労しながら働いている人が担っている介護」の実態とも符合します。サービスの調整等のマネジメント役割を担うならば、月に1回程度のケアマネジャーや介護サービス事業者との打ち合わせ時間確保のために半日や時間単位の休暇が有効でしょう。急な容態変化への対応としては「必要な時に休暇が取れる」こと、デイサービス等の介護サービスの利用時間にあわせて帰宅するためには、就業時間の調整や短時間勤務も有効となるでしょう。

両立支援制度を検討中の人事担当者の皆さんは、介護のために特別な働き方の変更が必要と思いがちですが、実は、子育て支援などで、すでに多くの企業に導入されている制度が求められているのです。ただし、現在、働きながら介護をしている人すべてが良い状態で「仕事と介護の両立」ができているとは限りません。多くの人は職場に「休みが取りにくい雰囲気があること」、休みを取ると「職場に迷惑をかける」ことや「評価に影響する」ことを気にかけています。大事なのは、どんな制度を導入するかよりも、導入した制度を利用しやすい雰囲気・環境をつくることなのです。

仕事と介護の両立のための望ましい働き方

※ 利用実態データの出所=三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」2013年3月

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