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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年5月26日 No.3271 投資・助成を通じた社会課題解決の手法を学ぶ -社会貢献担当者懇談会

発言する功能氏(左)と鈴木氏

経団連は4月26日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(金田晃一座長、山ノ川実夏座長)を開催した。「投資・助成の手法を通じた社会課題の解決」をテーマに、ARUN代表の功能聡子氏ならびにアジア・コミュニティ・センター21事務局長の鈴木真里氏から、投資・助成プログラムの運営等について説明を受けた。説明の概要は次のとおり。

■ 社会的投資の台頭(功能氏)

近年途上国では、ビジネスの手法を用いて貧困など社会課題の解決に取り組む社会起業家が注目されている。彼らは、立ち上げた組織の基盤が脆弱なため、銀行からの融資を受け難い一方、短期かつ少額のマイクロファイナンスでは事業資金を賄えないため、社会的投資を求める。ARUNは、企業や個人からの出資金を原資とし、投資家とこうした社会起業家をつなぎ、社会的投資を牽引するプラットフォームの構築を目指して活動している。

これまでに、カンボジアで5社、インドで1社に投資を行ってきている。起業家とは投資後も日々の関係を保つことで、投資家側も現地の状況をより深く理解でき、起業家とともにイノベーションを創出できることも大きな魅力といえる。

また最近では、投資の原資を集める方法として、出資だけでなく寄付という選択肢も設け、企業のCSR部門にとって使いやすい仕組みになるよう工夫している。投資をきっかけに、自社社員に投資先の現場を訪問させ、起業家との交流を通じ社員の学びを促す企画も考えられるだろう。寄付企業には今後、このような仕組みを通じて、社会的投資の考え方を普及させていきたい。

■ 公益信託「アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)」による助成(鈴木氏)

アジア・コミュニティ・センター21が事務局を務めるACTは1979年に発足した公益信託で、アジア諸国のNGO等に対し助成を行う。これまでに築いた各国のNGO等とのネットワークがわれわれの強みである。助成分野は幅広く、地域の住民が主体的に参加しているか、事業が革新的で持続的であるか等の視点で助成先を判断する。ACTが助成する相手(NGOまたは住民組織)は、ARUNの投資先に比べ、より収入向上活動や共同ビジネスの立ち上げ段階に近い組織である。

ACTは信託の出捐者と現地とを橋渡しする役目を担う。出捐者の希望を聞きながら助成プログラムを立ち上げ、出捐者の代わりに助成先をモニタリングする。また、助成先評価においては、プロジェクトの概要をまとめた「プロジェクト・デザイン・マトリックス」にあらかじめ達成目標を書いてもらうとともに、評価指標としてOECDによるODA評価にも使われる「DAC評価5項目」を用いる仕組みを導入している。

今後のACTには、出捐者と受け手の関係を対等に保ち、地域に必要なプロジェクトが提案される素地をつくることが望まれている。加えて、現地NGOとBOPビジネスに関心がある日本企業とを結びつける役割にも期待が寄せられている。

【政治・社会本部】

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