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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年7月14日 No.3278 OECDと国際課税に関する会議を開催 -BEPSプロジェクトに関する協力強化で一致

経団連(榊原定征会長)および21世紀政策研究所(三浦惺所長)は4日、東京・大手町の経団連会館でOECDと国際課税に関する会議を開催した。

OECDでは、経済のグローバル化に対応した新たな国際課税制度を構築するため、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを推進している。現在は、2015年10月に公表された最終報告書の勧告内容における一貫性ある実施・モニタリングおよび残された課題の検討がテーマとなっている。そこで6月30日、7月1日の両日、京都でOECD租税委員会が開催され、これまで議論に参加してこなかった新興国・途上国も含め、関心のあるすべての国・地域がBEPSプロジェクトの実施に参加できる包摂的枠組み(インクルーシブ・フレームワーク)を推進する第1回会合が行われている。

こうしたなか、経団連としてOECDならびに主要国当局者に直接日本企業の声を伝えるとともに、各国の勧告内容の実施状況を把握するため、昨年に引き続き、OECDの関係者や日米独の課税当局を招いて、同会議を開催した。

左から宮永副会長・税制委員長、浅川OECD租税委員会議長、
サンタマンOECD租税政策・税務行政センター局長、モリスBIAC税制・財政委員長

会議には経団連の宮永俊一副会長・税制委員長、林田英治税制委員長、21世紀政策研究所の青山慶二研究主幹(早稲田大学大学院教授)、パスカル・サンタマンOECD租税政策・税務行政センター局長、ロバート・スタック米国財務省副次官補(国際課税担当)、マーティン・クライエンバウム・ドイツ連邦財務省国際課税担当局長(次期OECD租税委員会議長に内定)、浅川雅嗣OECD租税委員会議長(財務省財務官)、OECDに対する民間経済界の諮問機関であるBIAC(経済財政諮問委員会)のウィリアム・モリス税制・財政委員長、会員企業から200名超が参加した。

宮永副会長は開会あいさつのなかで、OECDの包摂的枠組みについて、日本企業はとりわけアジアなどの新興国で多く事業を行っていることから、各国の税務行政が歩調をあわせることで、より投資・事業活動が活発になると指摘し、経団連としてこの枠組みを歓迎すると述べた。また、勧告内容の一貫性ある実施が極めて重要であり、各国のユニラテラルな動きを牽制するため、OECDや主要関係国が各国に対して指導力を発揮し、これまでのBEPSプロジェクトの合意事項を尊重するよう働きかける必要があると述べた。

講演するサンタマン局長

サンタマン局長は、基調講演において、「京都のOECD租税委員会には82カ国も参加しており、世界経済全体の90~95%を占める。グローバルなルールを実施する税のコミュニティーができた」と強調したうえで、有害税制への対応、租税条約の濫用防止、移転価格文書化、紛争解決メカニズムの整備という各国が遵守すべきミニマムスタンダードについて詳細を解説した。

また、OECD事務局、日米独の課税当局、BIAC、日本企業の税務担当者がパネリストとなって、各国における国内法制化(国別報告書や利子税制等)、租税条約(条約の濫用や紛争解決等)、移転価格税制について議論がなされた。このなかで、移転価格文書化にかかる国別報告書については、初年度の開始時期のズレの問題を解消する措置が明らかにされるとともに、マスターファイルの記載について、定性的な概要を示せばよいとの指摘がなされた。また、EUの国別報告書を公開するという提案については、日米独の当局やOECDなどから、経団連の意見と同様、この提案に反対するとの意見表明があった。

経団連は今後も、日本企業の要望を伝えるため、OECDとしかるべき時期に意見交換を行っていく。

【経済基盤本部】

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