Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年7月28日 No.3280  国家戦略特区の動きと小型無人機の活用可能性を聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会

講演する野波氏

経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催し、内閣府の藤原豊地方創生推進事務局審議官から国家戦略特区について、自律制御システム研究所の野波健蔵CEOから小型無人機の活用の可能性について、それぞれ説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 改正国家戦略特区法の概要と規制改革の提案募集

国家戦略特別区域法の成立から2年半が経過した。この間3次にわたり区域を指定・拡大し、合計10カ所が特区に指定されている。特区の経済規模は日本の経済活動の約6割に相当し、規制改革の効果は非常に大きい。

同制度で実現した規制改革メニューは68項目に上る。主な事例として、(1)都市計画法に基づく手続きのワンストップ化(2)法人設立にかかる手続きの集約化(3)雇用条件の明確化(4)民泊の旅館業法の適用除外(5)グローバル人材を育成する医学部の新設(6)家事支援外国人材の受け入れ(7)医療規制改革(保険外併用療養の特例等)(8)中山間地農業の改革(農業委員会と市の業務見直し等)(9)公設民営学校の解禁(10)近未来技術(小型無人機、自動走行)にかかる実証の支援――等がある。さらに今年5月27日には企業の農地取得特例や過疎地等での自家用自動車の活用拡大等、新たな規制改革事項を盛り込んだ改正国家戦略特区法が成立した。

国家戦略特区は、事業者や自治体から広く提案募集を随時行うほか、年2回規制改革提案を集中的に募集する「集中受付期間」を設けている。すべての提案に対して規制省庁が回答し、このうち優先度の高い提案は、特区ワーキンググループ等で規制省庁と直接折衝する。特区指定を受けなくても、提案内容に応じ、(1)現行制度のもとで対応(2)全国措置として実現(3)構造改革特区で実現――といった国家戦略特区以外の出口も用意しているので、積極的な提案をお願いしたい。

■ 小型無人機の可能性と望ましい制度設計のあり方

小型無人機の付加価値としては、(1)データを取る(2)モノを運ぶ(3)作業をする――の3つが挙げられる。現在は「情報収集」での利用が圧倒的だが、モノを運ぶ観点からは、物流に変革をもたらし、ラストワンマイル等の課題解決につながる可能性があるため「空の産業革命」とも呼ばれる。

今後は、整備・点検、測量、警備等の分野で活用が広がると予測される。日本では、建設分野で人手不足が深刻化する一方、ダムや橋梁等のインフラが寿命を迎えており、小型無人機を活用した測量による時間・コストの削減が注目されている。有人のヘリコプター等に依存していた山小屋への物資搬入についても、垂直飛行を得意とする小型無人機を使えば容易に可能となる。また、農地上空を飛行して得たデータに基づく最適な収穫時期を提案する外国企業も存在するなど、顧客へのソリューションの提供も重要である。

安倍首相は19年までに小型無人機による宅配の実現を目指すと表明し、現在、国家戦略特区の千葉市を中心に実証実験等が進んでいる。社会実装に向けた課題としては、規制緩和や技術開発に加えて制度設計が極めて重要である。例えば(1)機体の認証・登録制度の創設(2)事業者や操縦者の免許制度の創設(3)飛行経路の明確化(4)小型無人機同士の衝突を回避するルール整備等――が考えられる。

【産業政策本部】