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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年8月11日 No.3282 21世紀政策研究所が第120回シンポジウム -「独占禁止法審査手続の適正化に向けた課題」開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は7月28日、研究プロジェクト「独占禁止法審査手続の適正化に向けた課題」(研究主幹=上杉秋則・フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所シニアコンサルタント)の成果を踏まえ、東京・大手町の経団連会館で第120回シンポジウムを開催した。

冒頭、あいさつした経団連経済法規委員会競争法部会の川田順一部会長は、審査手続の適正化を早急に実現する必要があると述べたうえで、研究報告が適正化への後押しとなることへの期待を示すとともに、一日も早い適正化の実現に向け、出席者に協力を呼びかけた。

■ 研究報告

研究報告では、まず上杉研究主幹が、日本の事件処理手続の問題点を歴史的背景から説き起こして説明。一問一答方式ではなく取りまとめ方式で作成する従業員の供述調書を中心とする現在の審査手法は、紛争の未然防止という観点から非効率であり、また、弁護士の立会いや調書の写しの交付を行わない運用は適正手続にもとることは明らかと指摘した。また、弁護士・依頼者間秘匿特権について、公正取引委員会は法改正による導入をまたず、すぐにでも尊重する取り扱いとすべきとしたうえで、最後に、企業のコンプライアンス推進のためにも、適正手続を確保し、企業の納得感を高めることが重要であると締めくくった。

次に同プロジェクトの委員である関西大学法学部の滝川敏明教授が、わが国独占禁止法の審査手続の進むべき方向性について、刑事訴訟法の一部改正との比較から報告を行った。刑訴法改正では取り調べや供述調書への過度の依存からの脱却を基本方針として種々の改革が行われたことを紹介し、独占禁止法においても、企業の防御権確保の基本的前提として、弁護士の立会いや供述調書の写しの交付は、現在の課徴金制度のもとでも当然必要であるとした。

■ パネルディスカッション

続いて、研究会の委員を交えてパネルディスカッションを行った。

日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士は、企業の代理人を務める立場から、公取委の審査指針を意識的に活用して立入り検査や供述聴取に対応すべきとし、供述調書の内容に不満がある場合には、署名押印の前に加除訂正を要請すべきことなどを紹介した。

フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所の山田香織弁護士は、供述調書ではなく、企業が提出する書面中心の調査を行うEUの実務を紹介したうえで、手続き保障に関するEUの権利・ルールを踏まえた改革の方向性を示唆した。

パナソニック・知的財産センター課長の榊原美紀氏は、企業と公取委とが協力して審査を進めることを前提として、手続きの改善のためには、異議・苦情申立制度を活用するなど、企業側における対応も重要と指摘した。

日本電信電話法務担当課長の冨田和裕氏は、審査手続における透明性・公平性を確保することが、企業による違反行為の是正、コンプライアンス体制の構築にもつながることを強調した。

シンポジウムの詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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