Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年9月1日 No.3283  年休取得促進に向けた秋の重点取り組みを推進 -【トップが主導「年休3!4!5!」】/働き方・休み方改革集中取り組み年

経団連は「働き方・休み方改革集中取り組み年」の一環として、8月5日付で全会員企業、団体に対し、【トップが主導「年休3!4!5!」】と称する年次有給休暇の取得促進に向けた取り組みへの協力を呼びかけた。今号では同取り組み推進の背景と目的を紹介する。

■ なぜ年休の取得を促進する必要があるのか

労働力人口が減少するなか、持続的な成長を遂げていくためには、多様な人材が働きやすい環境の整備が不可欠である。

そうした環境整備に向け、多くの企業が長時間労働の削減や年休の取得促進に取り組んでいるものの、わが国における直近の年休取得率は47.6%であり、過去10年以上横ばいの状況が続いている(図表参照)。2010年に政府は政労使の合意のもと、2020年までに年休取得率を70%以上にすることを目標に掲げているが、その達成には一層の取り組みが必要である。

こうした背景のもと、経団連では年休の取得促進に重点的に取り組むこととした。

年次有給休暇取得率・週労働時間が60時間以上の雇用者割合

■ 【トップが主導「年休3!4!5!」】のねらいと期待

(1)年3日程度の追加的な年休の取得に取り組む

今年3月に開催された「未来投資に向けた官民対話」において、国内観光の拡大策の一環として、年休の取得促進等に官民が連携して取り組むことになり、経団連の榊原定征会長は「年3日程度の追加的な年休の取得」を呼びかけてきた。今回は観光促進および年休取得の底上げの2つの観点から重ねて呼びかけを行うものである。

(2)秋(9~11月頃)に年休と土日・祝日を組み合わせて4連休をつくる

秋はいわゆるシルバーウィークをはじめ、祝日が多く設定されていることから、それらの土日・祝日と年休を組み合わせて4連休を取得し、心身をリフレッシュしてもらうために盛り込んでいる。連休中に旅行や新たな体験などを通して見聞を広めることや、自己研鑽に励むことで、イノベーションの創出など、業務への波及効果も得られると期待している。

(3)年休の取得日数が5日未満の従業員が生じないよう取り組む

現在国会に上程されている労働基準法改正案には、年休のうち年5日については何らかのかたちで必ず取得させることが盛り込まれている。これは、管理監督者も含め、付与日数が10日以上である全労働者を対象とする措置であり、使用者に罰則付きで履行が求められる。今回の呼びかけに盛り込むことで、各社において早めに自社の年休取得の実態を把握、対策を検討してもらい、法成立後の円滑な対応を促すねらいがある。

■ 年休の取得促進に向けた好事例

年休の取得が進まない理由として、上司や同僚が取得しないため、職場全体が休みづらい雰囲気となっていることが挙げられる。そうした職場風土を変えるには、経営トップの強いリーダーシップが重要である。そこでA社では、経営トップが管理職を含む全従業員に対し長期休暇の取得促進などを含む働き方改革に向けたメッセージを発信し、自身も率先して長期の休暇を取得することで社内の雰囲気を変えている。

またB社では年休の取得促進に向けて期初に取得計画を立て、部署内で共有するとともに毎月上司が取得状況を確認している。加えて計画どおりに取得できていない部下に対して都度フォローを行うことで、業務の平準化にも効果を発揮している。ほかにも飛び石連休や3連休の前後を個人単位の計画年休日とすることで、連休を取得しやすいよう工夫している企業などが増えている。

なお、仕事量が変わらない状況で年休取得を推奨することは、社員の理解が得にくく効果にも限界がある。休み方改革は、業務プロセスの見直しや従業員間の業務配分のムラをなくすなどの「しごと・業務改革」と一体で行うことが望まれる。

各社におかれては、今回の【トップが主導「年休3!4!5!」】をきっかけに自社の実情にあわせた効果的な取り組みを検討してほしい。

【労働法制本部】