経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は9月30日、ICTを積極的に活用する学習で先駆的な取り組みを行っている千代田区立神田一橋中学校を訪問。各学年の授業を見学した後、太田耕司校長からICT活用によるアクティブ・ラーニングの意義や課題について説明を聞くとともに懇談した。
■ 「情報教育推進校」としての役割
同校は2014年8月の新校舎完成の際に整備されたタブレット等を活用して、各教科でアクティブ・ラーニングを実践している。生徒1人につき1台のタブレットを配備するなど、恵まれたICT環境を十分に活用しながら、生徒の学力向上を目指した取り組みを実践していくことが「情報教育推進校」としての使命と考え、「学力向上のための授業改善~ICT機器の活用を通して」という主題を掲げて、その成果や課題を区内すべての学校へ発信する活動を太田校長自ら率先して行っている。
■ ICT活用によるアクティブ・ラーニング
当日はまず、各学年のさまざまな科目の授業を見学した。すべての教室に設置された電子黒板を教員が積極的に活用している様子が見て取れた。3年生の英語の授業では、数日前に実施された京都・奈良への修学旅行で生徒たちが撮った動画が電子黒板上に再生されていた。生徒たちには事前に、「外国人観光客と会話をし、その様子を録画する」という課題が提示されており、グループごとに撮影した動画についての発表を行っていた。生徒たちは他グループの動画を熱心に見て積極的に質問し、教員は外国人の発言内容についてジェスチャーも交えて問うなどの授業形式は、ICTを効果的に活用したアクティブ・ラーニングとなっている。
■ 校長のトップダウンによるICTの推進
授業見学後、太田校長から同校におけるICTを活用した教育についての説明があった。太田校長は校舎改修時、特に注意したこととして、(1)無線LANのためのアクセスポイントや1人1台のデバイス確保などのICTインフラ環境の整備(2)教員が授業で簡単に利用できる汎用性の高い学習支援ソフトの充実(3)電子黒板や教員用PCなどの「常設」――を挙げた。そのうえで、実際に授業を行う教員たちに校長のトップダウンで、ICTに「慣れる」「使う」、そして「授業に組み込む」までを推し進め、現在は教員も積極的にICTを活用しているが、教員へのさらなる研修が今後の課題であると指摘した。
また、教員に「何のためにICTを使うのか」をもう一度考えてもらうためには、教員同士での授業の相互チェックも必要であると考え、教員による授業見学を教員の時間割に組み込むことなども検討していると述べた。
<意見交換>
その後の質疑では、経団連側からの「ICT活用による学習の成果や指標をどのように設定しているか」という質問に対し、太田校長は「エビデンスを示すことは非常に難しい。今後の課題ではあるが、確実にいえることは、アンケートで80%以上の生徒が『ICTを使うことで授業がわかりやすくなった』と答えていることだ」と回答した。
【教育・スポーツ推進本部】