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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年10月20日 No.3289 データ利活用に関する講演会開催 -21世紀政策研究所

講演する越塚教授

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は9月28日、東京・大手町の経団連会館で東京大学大学院情報学環の越塚登教授を講師に迎え、講演会「ビッグデータ、AI、IoT時代のデータ活用と、イノベーション」を開催した。

同研究所は今後、越塚教授を研究主幹として、データを利活用して新たなビジネスにつなげ、日本の産業を活性化するための研究プロジェクトを立ち上げる予定である。同講演会は、研究プロジェクトのキックオフイベントとして開催され、会員企業などから約200名が参加した。

冒頭、越塚教授は、データ利活用を考える際に、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)の現状、コンピューターの能力や通信データのスケールを実感のある数字として把握することが重要と指摘した。また、「情報を制する者は世界を制する」の具体的事例を示しながら、現在の世界はインターネット等を利用した「情報覇権戦争の真っ只中」にあり、日本がその流れに乗り後れるわけにはいかないと述べた。

続いて、従来は他者とのサービスの差別化のため、過去を評価してきめ細やかな最適化を行ったり、過去のデータから未来予測を行ったりするなど、データを囲い込むクローズド型の使用方法が取られていたと説明。これまでの日本のモノづくりは、人の意識を高めることで差別化していたものの、AI、IoTの時代には同様のサービスを低コストかつ正確に行えるようにするため、従来の方針を貫くのか、異なる活路を見いだしていくのかを考えるべき時期に来ていると指摘した。

そこで、これからの活用が期待される方法の1つがオープンデータであるとして、その一例として東京周辺の公共交通オープンデータの試みについて説明した。

オープンデータは、行政の透明化、官民協働の推進や経済活性化を期待して、公共データを2次利用可能なかたちで開示するという取り組みとして始まった。政府が今般定めた「オープンデータ2.0」では、データ利活用のさらなる深化を目指し、民間企業にも協調的な領域でのオープンデータ的な取り組みについて協力を求めることとしている。

越塚教授は、オープン化を促進すべき対象は公共性の高いデータであるとしたうえで、行政以外の組織がこのようなデータを保有している例も多いことを指摘した。そして、東京メトロが車両の位置情報等、自社で保有するデータを開示し、利用客の生活をより便利・快適にするためのアプリ開発コンテストを行ったところ、280以上の応募があったという例を挙げ、東京メトロには、情報提供サービスの開発コストの節約と新たな発想の獲得というメリットがあり、コンテスト参加事業者にも新たなビジネスチャンスを提供することができ、双方に利益があったことを紹介した。そのうえで、データの利用方法は単なる商材としての活用にとどまらず、オープンにすることで、新たなビジネスを生み出すなどデータ保有者によい結果をもたらすことが可能となることを強調した。

最後に越塚教授は、データのオープン化が民間で進まない理由として、これまで蓄積されてきた膨大な紙のデータの維持コスト等との兼ね合いや、データのオープン化を安定させるための社会的な制度・人材育成の問題を挙げた。21世紀政策研究所の新プロジェクトでは、データ利活用を促進するために役立つような研究を行いたいと締めくくった。

【21世紀政策研究所】

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