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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年11月3日 No.3291 医療保険・介護保険制度改革に対する健保連の考え方を聞く -社会保障委員会

経団連は10月12日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会(鈴木茂晴委員長、鈴木伸弥委員長、櫻田謙悟委員長)を開催し、健康保険組合連合会(健保連)の白川修二副会長から、医療保険・介護保険制度改革に関する健保連の考え方について講演を聞いた後、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。

■ 医療保険・介護保険制度を取り巻く環境

留意すべき点として、消費税10%の引き上げが延期されたこと、政府が健康長寿社会の実現を政策として掲げていることなどが挙げられる。加えて、都道府県が策定する医療費適正化計画などの新たな計画期間の開始や診療報酬・介護報酬の同時改定を2018年度に控え、現在さまざまな検討が進められている。

■ 健康保険組合の状況

現行の高齢者医療制度の創設に伴う支援金・納付金等の負担により、08年度以降、13年度にかけて健保組合は赤字の状況が続き、厳しい財政状況下にある。14年度以降、黒字に反転したが、これは多くの組合で保険料率の引き上げを行ったことによるものである。このため現在、健保組合の平均保険料率は9.1%となっており、協会けんぽの平均保険料率(10.0%)を上回る組合が299ある。このようななか報酬が伸び悩む一方で、高齢者医療の支援金・納付金等の負担は重く、法定給付費を上回る伸びを示しており、経常支出の41.4%に上っている(16年度予算)。もはや、財政上、健保組合にはこれ以上切り詰める余地はなく、また、6割を超える健保組合が保険料収入の40%以上を高齢者医療に対し拠出している状況は保険制度として問題があると考えている。

被保険者1人当たりの保険料は、現行の高齢者医療制度の導入前の07年以降、9年間で9万5742円増加した。しかし、保険料は給与からの天引きであることなどから、なかなか負担について実感が持たれない。

■ 健保組合の課題と健保連の主張

今後の課題として医療費の増加への対応がある。足もとでは、高額な薬剤の保険収載が調剤医療費を増加させている。一部の高額薬剤については、薬価引き下げに向けた検討が進められているが、今後もこういった薬剤の収載も想定され、保険財政への影響に鑑み対応が必要である。

また、高齢化による医療費の増加への対応も必要である。現役世代の人口が減少していくなか、このままでは医療費の増加を支えきれない。現在、優遇されている後期高齢者医療の保険料軽減特例や負担割合の見直し、消費税の引き上げによる高齢者医療への公費投入など、負担構造を変えていくことが求められる。同時に、軽症者に対する給付を公的保険から外すなどの適用範囲のあり方の見直しも必要である。加えて、医療提供体制も見直しを進めなければならない。日本では急性期病床が過剰な状況にあり、今後の慢性期医療に対するニーズの増加にあわせた医療機関の機能分化を進めていくことが求められる。

また、現在、介護保険制度改革のなかで被用者保険の「介護納付金の総報酬割」の導入に関する検討が進められているが、そもそも40歳から64歳の第2号被保険者は、給付を受ける可能性が低いなかで社会的扶養のために保険料を負担している。制度創設時に全国共通のルールとして、加入者割が選択された経緯があり、被用者保険のみ総報酬割とすることは従来の理念を逸脱することから、健保連としては反対を主張している。

これ以上の負担増により、多くの健保組合が解散に追いこまれるようなことになれば、国民皆保険制度自体の存続も危ぶまれる。健保連としても、健保組合の健全な運営の観点も踏まえた主張を展開していきたい。

【経済政策本部】

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