Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月12日 No.3299  格差是正のための教育政策のあり方と第3期教育振興基本計画について意見交換 -教育問題委員会

経団連は12月6日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(渡邉光一郎委員長、岡本毅委員長)を開催した。鈴木寛文部科学大臣補佐官(東京大学・慶應義塾大学教授)から格差是正のための教育政策のあり方について、また有松育子文部科学省生涯学習政策局長から第3期教育振興基本計画策定に向けた検討状況について説明を聞くとともに意見交換した。

■ なぜいま教育改革なのか

講演する鈴木補佐官

鈴木補佐官は、21世紀の社会では「人工知能(AI)、IoT(Internet of Things)、ロボティクスなどに代表される科学技術の飛躍的な進展により、多くの職業がAIに代替されることが予想される。AIでは解けない課題に向き合い、激動の時代を生き抜ける人材を育成する必要がある」と指摘した。さらに、「直近のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)などの国際学力調査では日本の15歳児はトップ・グループに位置しているが、マニュアルを正確に再現する力や定型業務処理能力などの育成を重視した20世紀型の教育から、想定外や板挟みの状況と向き合い乗り越えられる人材、創造的・協働的活動を創発しやり遂げる人材を育成する教育に大きくかじを切るべきである」と訴えるとともに、「高大接続改革や主体的で深い学びを目指すアクティブ・ラーニングへの転換もそのための手段である」と述べた。

■ 目指すべきは切れ目のない教育費負担の軽減

格差是正のための教育改革について鈴木補佐官は、「経済的援助を受ける家庭の児童数は1995年の16人に1人から、2013年には6人に1人になるなど急増している」ことや「所得をはじめとした家庭の社会経済的背景と学力には明らかな相関関係がみられる」ことを示したうえで、幼児期から義務教育段階、高校等段階、高等教育段階に至るまで、すべての階層での切れ目のない教育費負担軽減の必要性を訴えた。

また、「幼児期の教育支援は将来的な犯罪率の抑制や発達障害児の早期発見に資するなど、投資効率は最もよいといわれている」ことを紹介するとともに、「貸与型でなく本当の意味での“スカラーシップ”である大学などへの進学のための給付型奨学金の創設は、教育改革に携わるものにとって長年の悲願である」と述べ、喫緊の課題は幼児教育の無償化と高等教育段階での大学等奨学金事業の充実であることを指摘した。

〈意見交換―学びのセーフティネットが重要〉

意見交換では、渡邉委員長から「格差是正のために、教育政策の基本的な方針のなかに学びのセーフティネットの整備を位置づけることは日本の将来にとって必須である」との指摘があった。他方、「貧困問題は政府全体としての取り組みが不可欠である」として、文部科学省だけでなく、省庁を横断した解決策の創出を求めた。

■ 第3期教育振興基本計画の検討状況

続いて、2018年度から実施される第3期教育振興基本計画について有松局長は、(1)2030年以降の社会の変化を見据えた、教育政策のあり方、(2)各種教育施策の効果の専門的・多角的な分析、検証に基づく、より効果的な教育施策の立案――の2つの諮問事項に基づき検討を進めており、2017年1月をめどに、教育政策の基本的な方針について教育の果たすべき役割と必要な基盤整備の視点から整理していることを説明した。

経団連からは「第2期計画で生涯学習社会を構築するための旗印とされた『自立』『協働』『創造』の理念については、第3期計画にも引き継いでほしい」と指摘し、計画の継続性を求めた。

【教育・スポーツ推進本部】