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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月12日 No.3299 国民経済計算の平成23年基準改定について聞く -経済財政委員会統計部会

経団連の経済財政委員会統計部会(野呂順一部会長)は12月13日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課の多田洋介課長から12月8日に公表された推計結果を含め、国民経済計算の平成23年基準改定について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

1.JSNAの2008SNA対応

わが国のSNA(JSNA)は約5年ごとに基準改定が実施される。2016年末実施の平成23年基準改定では、最新の「平成23年産業連関表」の取り込み等に加え、最新の国際基準である「2008SNA」への対応を行った。国際基準対応は16年ぶりとなる。

2008SNAは、前身の1993SNAをベースにそれ以降の経済・金融環境の変化に対応した最新の国際基準であり、09年2月に国連で採択された。平成23年基準改定における2008SNA対応にかかる主な変更は次のとおりである。

  • R&Dの資本化
    2008SNAでは、研究・開発(R&D)は知識ストックを増加させ、それを使って新たな付加価値を生み出す創造的作業と位置づける。R&Dへの支出は、1993SNAのように中間消費ではなく、総固定資本形成として記録され、これによる知識ストックの蓄積を固定資産として扱う。
    JSNAにおいても、2008SNAを踏まえR&Dを資本化する。例えば、企業内研究開発については、平成17年基準ではR&Dにかかる費用は各種生産費用に内包される一方、R&Dという知的財産生産物の産出としては認識されていなかった。平成23年基準ではR&D産出額を新たに記録し、主な需要先を総固定資本形成とする。

  • 特許等サービスの扱いの変更
    2008SNAでは、R&Dの資本化に伴い、特許実体はR&Dの成果として固定資産としてのR&Dに内包される。
    JSNAにおいても、特許実体を固定資産(R&D)に含めて記録するとともに、特許等使用料の受け取りを「特許等サービス」の産出として記録する。これにより、海外との特許等使用料の受け払いは特許等サービスの輸出入として記録され、GDPに影響を与える。

このほか、2008SNA対応として、防衛装備品の資本化、雇用者ストックオプションの記録等も行った。また、2008SNA対応以外の推計手法の改善として、建設部門の産出額の開発を行った。

2.平成23年基準改定の推計結果

16年12月8日に基準改定を反映した「平成27年度年次推計(支出側系列等)」と「平成28年7-9月期四半期別GDP2次速報」を公表した。

名目GDP水準は直近の10年間でみると、R&D資本化等の2008SNA対応を主因に20兆~30兆円上方改定された。例えば、15年度の名目GDPは旧基準500.6兆円から新基準532.2兆円となっている。

3.統計メーカーとしての考え方

経済構造が変化していくなかで、動向を常に的確に捕捉するには、SNAの基礎となる一次統計の改善と加工・推計手法の開発の両面で不断の努力が必要である。

SNAに寄せられるさまざまな批判には、もっともなものと誤解によるものが混在している。さらなる改善が必要な点については、地に足の着いた研究に基づく着実な対応が必要である一方、妥当でない批判に対しても、統計メーカーとしてユーザーとの丁寧なコミュニケーションが重要である。

【経済政策本部】

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