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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月19日 No.3300 森金融庁長官から「金融行政の現状と課題」について聞く -金融・資本市場委員会

説明する森金融庁長官

経団連は12月22日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会(國部毅委員長、釡和明委員長)を開催し、森信親金融庁長官から、金融行政の現状と課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 金融行政運営の基本方針

金融庁は、(1)金融システムの安定/金融仲介機能の発揮(2)利用者保護/利用者利便(3)市場の公正性・透明性/活力を確保すること――により、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指す。

金融を取り巻く環境が急激に変化するなか、上記を実現するためには、(1)金融当局・金融行政運営の変革(2)国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換(3)「共通価値の創造」を目指した金融機関のビジネスモデルの転換――が必要となる。

■ 活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保

家計、販売会社(銀行、証券会社、保険会社等)、機関投資家(アセットオーナー、運用機関)や、こうした主体を取り巻く市場・経済のそれぞれに課題があり、それぞれの行動パターンを変えていくことで、よりよい均衡に向かっていくのではないかと考える。

家計についてみれば、1700兆円を超える家計金融資産があるが、その半分以上が現金・預金となっている。貯蓄から投資へということが30年近くいわれているが、デフレや資産価格の下落局面等が長く続いたことで、投資の成功体験が不足していることもあり、なかなか進んでいない。長期・積立・分散投資の促進を図ることで、より安定的な資産形成を実現していくことが、高齢化社会において必要となる。

■ 国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティー

金融機関側が、顧客に成功体験を与えるような商品を売る、顧客のベスト・インタレストのために行動するというプリンシプルが必要ではないかと考えている。金融審議会市場ワーキング・グループにおいて、手数料等の明確化、利益相反の適切な管理、顧客の最善の利益の追求等のプリンシプルについて議論を行ってきた。また、こうした取り組みが促されるよう、金融機関の従業員等に対する適切な動機づけの枠組みが重要であると考えている。

■ コーポレートガバナンス改革の深化に向けた取り組み

全世界共通の事象であるが、どの市場においても投資家の株式保有期間が短くなってきており、そのことに対して懸念を抱いている。企業価値を評価し、中長期的に企業にエンゲージメントしながら、投資先企業の価値を高めていこうというタイプの投資家がだんだん少なくなってきている。こうした動きが、市場における価格発見機能を弱めるという面もある。また、投資家が短期思考となると、企業の経営者と投資家の間で、経営に対するタイム・フレームが一致しなくなるおそれもある。

こうしたなか、金融庁としては、企業価値を持続的に向上させていくにはどうすればよいかという観点から、スチュワードシップ・コードの見直しの検討を進めている。さらに、アセットオーナーが運用機関に働きかけて、運用機関が投資先企業と中長期的な視点に立った建設的な対話を実施しているのかを実効的にみていく。こうした取り組みを通じて、企業と投資家による、同じ目線、長期のタイム・フレームに立った建設的な対話が進んでいくことを期待している。

【経済基盤本部】

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