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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月19日 No.3300 英国のEU離脱問題に関する懇談会を実施 -ヨーロッパ地域委員会

経団連のヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、石塚博昭委員長)は12月20日、東京・大手町の経団連会館で、ブリュッセルを拠点にEU関係のコンサルティングを行っているアヴィザ・パートナーズのジャック・ラフィッテ氏との懇談会(座長=石塚委員長)を開催し、英国のEU離脱問題の現状と展望を聞くとともに意見交換した。
ラフィッテ氏の説明の概要は次のとおり。

英国が望むBrexitの全体像はまだ明らかになっていないが、すでに同国が欧州司法裁判所の判決やEUからの自由な労働者の移動を受け入れないと明言している以上、いわゆるソフトブレグジットは不可能である。

早ければ2019年春に英国はEUから離脱するが、今後のスケジュールには不確定要素も多い。英国のメイ首相は17年3月末までに離脱通知を行うと表明しているが、先の高等法院の判決に続き、最高裁判所が離脱通知への議会関与の必要性を認めれば、交渉開始が遅れる可能性がある。離脱交渉の期間は実質15カ月と非常に限られており、不十分との声も多い。別途実施される新たな通商枠組み交渉、いわゆるスーパー自由貿易協定(FTA)交渉には5~10年はかかる。最悪のシナリオは何も合意がまとまらないことだ。ただし、英国とEUが共通の利害を有する特定の金融サービス分野については、移行協定が検討される可能性が高い。

さまざまな論点をめぐり英EU間には大きな見解の隔たりがあり、交渉は困難を極めるだろう。EU側のバルニエ首席交渉官は、離脱交渉を終えてからFTA交渉を行うとしているが、英国はおそらく両者を同時並行で行うことを希望する。また、バルニエ氏が、離脱交渉に際し英国は未払いのEU拠出金、およそ500億ポンドを支払う義務があると発言したところ、英国側は強く反発している。

他方、EUは英国が法人税減税を加速しようとしていることを受け、同国がシンガポールのようなタックスヘイブンを目指すのではと懸念している。欧州委員会は、アップル社がアイルランドで受けていた税優遇が国家補助に当たると判断し、アイルランド政府に同社への追徴課税を指示するなど、多国籍企業に関する税制の立て直しを図っている。英国のタックスヘイブン化は容認されないだろう。英国が希望すればEUの関税同盟に残留することは可能だが、域外への共通通商政策の適用が前提となる。

<意見交換>

―― 英国は独仏はじめ加盟各国との二国間関係をてこに、自国の主張に対する理解を得て交渉を有利に進めようとしていると聞くが。

ラフィッテ氏:
個別加盟国へのアプローチは失敗に終わっている。伝統的に英国と強い協力関係を有するオランダや北欧諸国でさえ、Brexitについてはブリュッセルが加盟国を代表して一元的に交渉を行うことを支持しており、27カ国の結束は極めて強い。

―― 離脱交渉が15カ月を超過する可能性はあるか。

ラフィッテ氏:
加盟国の全会一致により期間延長が可能。FTA交渉にはさらに時間がかかる見込みであり、移行期の取り決めが必要になるが、フォックス国際貿易相、デービスEU離脱相はいずれも移行協定締結に後ろ向きな発言をしている。

【国際経済本部】

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