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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年2月9日 No.3303 ダイバーシティ・マネジメントセミナー開催 -ダイバーシティ時代における企業の戦略

経団連は1月19日、東京・大手町の経団連会館で内閣府との共催で「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。同セミナーは、経営戦略としてのダイバーシティ時代の働き方やマネジメントについて考えることを目的としており、2013年度から開始、今年度で4度目の開催となる。セミナーには、企業の管理職やダイバーシティ推進の担当者ら約250名が参加した。概要は次のとおり。

■ 基調講演「企業経営とダイバーシティ・マネジメント」
経団連副会長・野村ホールディングス/野村證券会長・古賀信行氏

講演する古賀副会長

日本は人口減少、超高齢化、少子化に直面し、労働力人口が減少するなか、その解決策として多様な人材の活躍が叫ばれているが、こうしたマクロ上の要請に応えるだけでは企業がダイバーシティに取り組む意義として不十分である。企業経営においては、「企業の競争力を向上させる」という確信が取り組みの原動力となる。

経営者にとっては「時代に即して企業を強くする」「従業員がいきいきと働ける場をつくる」といった視点が重要である。一昔前の高度経済成長期はやることが決まっていて、金太郎飴のように従業員の同質性が高い組織は強く、生産や販売の量を増やせば企業収益へつながった。

しかし、時代とともに環境が変わり、現在は全従業員が同じ方向へ突き進むことは企業の崩壊につながりかねない。各々がやりたいことを見つけ、そのために必要なスキルを身につけることが重要である。

企業内には意図せずダイバーシティを拒む要素が存在することがあるので、マイノリティーが不公平感や区別されていると感じていないか注意する必要がある。以前の日本企業では、「男性・大卒・新卒・日本人・正社員」といった同質性を重視した。しかし、今後はダイバーシティのさまざまな要素を受け入れ、皆に平等であると感じさせたうえで「企業の力」にできる会社が勝者になる。

経団連に対して保守的なイメージを持つ方もいるかもしれないが、近年、経団連においても女性の活躍推進を中心にダイバーシティに関する取り組みが行われている。政策提言活動のみならず、「女性の役員・管理職登用等に関する自主行動計画」の自主的策定を会員企業に対して促したり、審議員会副議長に女性を登用したりしている。また、会員企業の女性役員に対するネットワーク構築プログラムの提供やメンタリングの実施など、目にみえるかたちで変化している。

ダイバーシティの概念のなかでも、LGBT(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender)は特に日本になじみがない。LGBTは持って生まれた個性のため、変えることはできない。しかしながら、日本ではLGBTが一過性のものととらえられ、変えようと外圧がかかるケースが散見される。日本の人口の7.6%がLGBTとの調査もあるものの、その存在が十分に認知されていない。当事者が働きやすい環境をつくるためには、オリンピック憲章にみられるような「性別、性的指向などを理由に差別しない」ことを会社側が明示することが重要であり、当社も倫理規定等に明記している。また、ダイバーシティの推進はトップダウンとボトムアップの両方から行われるべきである。自発的な取り組みが重要であることを踏まえれば、特にボトムアップの取り組みが重要であろう。

組織を変革することは容易ではない。しかしながら偏見は変えることもできるはずである。意識的に変えていく必要があろう。各人が地道な活動を展開して、がんばってほしい。

■ パネルディスカッション

第二部では、「リーダーが語る我が社のダイバーシティ戦略」と題し、先進的な取り組みを進める企業として、サトーホールディングスの松山一雄社長、全日本空輸の河本宏子取締役専務執行役員、損保ジャパン日本興亜の笠井聡執行役員をパネリストに迎え、各社の特徴的な事例紹介や取り組みを浸透させるための意識改革の手法などを聞いた。

ファシリテーターを務めた法政大学キャリアデザイン学部の武石恵美子教授は、「ダイバーシティは、単にすべての意見を聞き入れることではなく、個人の価値観を共有し、振り返りながら取り組みを進めていくことが重要である。社会全体が多様化するなかで、まさに一人ひとりが自立し、自分の考えを周囲に理解してもらうよう示していくことが必要である」と締めくくった。

【政治・社会本部】

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