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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年5月25日 No.3316 シリア人道危機の現状から企業による難民支援のあり方を考える -社会貢献担当者懇談会

説明する月岡氏(左)と平野氏

経団連は4月18日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(金田晃一座長、山ノ川実夏座長)を開催し、国内外で人道支援活動を行うジャパン・プラットフォーム(JPF)の事業評価部副部長の月岡悠氏、渉外部部長代理の平野尚也氏から、シリア人道危機に関する現状について説明を聞くとともに、企業による難民支援について活発な意見交換が行われた。両氏の説明の概要は次のとおり。

■ 過酷な難民キャンプ

2011年の反政権デモ発生を契機にシリア国内が混乱し、イスラム過激派武装勢力の台頭もあって約600万人の国内避難民、周辺国への流出を含めると約1100万人の難民が発生した。レバノンには人口の4分の1にあたるシリア難民が流入しており、難民とホストコミュニティーの間に軋轢が生じている。難民キャンプは砂漠などの劣悪な環境にあることが多く、建設途中のビルやプラスチックシートで寒さをしのいで暮らす人々もいる。JPFでは、支援物資の提供をしながら、生活状況を把握し、その後の支援計画に反映させている。

■ 企業と人道支援の接点

人道危機は社会基盤への脅威であり、経済活動がグローバル化するなか、企業もリスク回避の観点から無縁ではいられない。多国籍企業において難民の児童労働が問題になった例もある。

持続可能な開発目標(SDGs)や責任投資原則といった社会性を持った規範の影響力が拡大し、企業の果たす役割に期待が寄せられている。

さらに、難民支援は新しい商機となる可能性を秘めている。例えば、英国のイーブンプロダクツ社は国際NGOオックスファムに給水タンクや給水管を納入している。同社の製品はユニセフや赤十字でも使用されている。また、米国のベリフォン社は難民に配給する電子バウチャーの読み取り機を納入している。

国際援助機関などが難民キャンプに導入する製品・サービスには細かい仕様ルールがあるが、現在は欧米企業がルールづくりを主導している。日本企業が参入するには、イノベーティブな製品・サービスを生み出し、NGOと一緒に仕様ルールづくりから参画する必要がある。

JPFは現地とのネットワークを通じて、支援活動の成果や改善点を知る機会を有している。企業の皆さまとは、ビジネスの創出などにつながる対話の機会を今後ともつくっていきたい。

【教育・CSR本部】

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