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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月1日 No.3317 アゼベドWTO事務局長と懇談

アゼベド事務局長(右)と神戸部会長

経団連の神戸司郎通商政策委員会企画部会長は5月22日、東京・大手町の経団連会館で、来日したロベルト・アゼベド世界貿易機関(WTO)事務局長と懇談し、多角的自由貿易体制の今日的役割と、今年12月に予定されている第11回WTO閣僚会議(ブエノスアイレス)における成果に関する議論の進捗について説明を聞くとともに意見交換を行った。
アゼベド事務局長からの説明要旨は次のとおり。

WTO事務局長として1期目の過去4年間、情報技術協定(ITA)の拡大や貿易円滑化協定の発効などの成果が得られたが、(今年秋からの)2期目の課題は多い。

世界経済は低成長に直面し、貿易自由化によって最も恩恵を受けた先進国で反グローバル化、アンチ・トレードの傾向がある。また、これまでWTOで多くの成果を主導してきた米国が、現在あまり議論に関与していない。しかし、WTOは米国の利益にも大いに資する議論をしている。米国新政権のもとでの国内における議論を経て、WTOの場に戻ってくると信じている。

今年末の第11回WTO閣僚会議に向けては、可能な限りの進展を目指している。

ドーハ・ラウンド交渉の一部でもある鉱工業品、農業、サービス貿易等に関しては、具体的な成果を得ることは難しい状況にある。漁業補助金の禁止に関しては、推進していた米国による関与のない現状で予測は困難だが、成果となる可能性はある。

ドーハ・ラウンドで扱われていない新たな課題(ニュー・イシュー)についても、電子商取引(デジタル貿易)、投資円滑化、中小企業などが議論されている。これらは進展があるかもしれないが、全WTO加盟国の間での合意は困難である。

デジタル貿易に関しては、データの自由な越境流通やデータローカリゼーション(データの国内保存要求)の禁止などが重要な論点だが、意見の隔たりが大きい。成果を求める複数国間での取り組み(プルリ交渉)となるのではないか。

<意見交換>

アゼベド事務局長に対し、経団連側からは、グローバルな自由化やルールづくりにおいて中心的な役割を担うWTOを重視するとしたうえで、グローバルなサプライチェーン、バリューチェーンの複雑化やデジタル化といった現実の動きをWTOの場に反映する必要があると述べた。

具体的な要望としては、新たなサービス貿易協定(TiSA)交渉や環境物品協定(EGA)交渉など、既存の複数国間(プルリ)交渉の推進に加え、ITAの加盟国や対象品目のさらなる拡大、データローカリゼーションの禁止、電子的な送信に対する関税不賦課の恒久化の約束など、デジタル貿易に関する多国間における高いレベルのルールの実現等を求めた。

また、WTOとビジネス界との対話の枠組み(トレードダイアローグ※)における提言取りまとめに際し、経団連として積極的に貢献してきたことを説明し、一層の連携強化を要請した。

これに対しアゼベド事務局長は、民間との対話は極めて重要として、ジュネーブにおいても経団連との議論を継続したいとの期待を示した。

※ トレードダイアローグにおける提言はWTOウェブサイトを参照
https://www.wto.org/english/news_e/news17_e/bus_06apr17_e.htm

【国際経済本部】

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