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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月1日 No.3317 「倫理的消費(エシカル消費)」の重要性について聞く -消費者政策委員会企画部会

経団連の消費者政策委員会企画部会(高山靖子部会長)は5月16日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、消費者庁の金子浩之消費者教育・地方協力課長から、消費者庁が4月19日に取りまとめた「『倫理的消費』調査研究会取りまとめ」について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 倫理的消費とは

倫理的消費とは、消費者基本計画で述べられているように「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動」のことである。言い換えれば、消費者一人ひとりが社会的課題の解決を目指して積極的に行動したり、社会的課題の解決に取り組む事業者を応援したりすることであり、具体的には、フェアトレード商品や環境に配慮したエコ商品の購買、地産地消や動物福祉の推進、オーガニック製品の利用などがあげられる。

英国では、1989年に「倫理的消費者」を意味する「エシカルコンシューマー」という専門誌が創刊されたことにはじまり、エシカルビジネスに関する協会が発足した。加えて、2015年には企業側のイニシアティブにより、サプライチェーンにおいて奴隷労働や人身取引がないことの確認を義務づける「現代奴隷法」が制定された。その他の国でも取り組みが進んでおり、海外では広く「倫理的消費」の考え方が浸透している。

■ 求められる取り組みの方向性

日本ではまだ倫理的消費という言葉が浸透していないが、倫理的消費は消費を通じて世界を変える可能性を秘めている。環境への負荷などの社会的コストの意識を含め、取り組みの必要性を広く国民が理解し、積極的に行動することを期待したい。消費者の意識のさらなる向上を図るために、学校教育等を含め幅広く消費者教育を行ったり、さまざまな主体の連携による推進活動を進めたりする必要がある。また、「倫理的消費」という言葉は難しくとらえられてしまうおそれがあるため、「エシカル消費」と言い換えるなど、わかりやすく継続的に伝えていくことが重要である。

事業者には、消費者に対し、エシカルな商品やサービスあるいは事業者自身に関する情報を日ごろから提供することが求められる。「どの商品がエシカルなのかわからない」というのは、頻繁に寄せられる声の1つである。また、事業者の参画により、倫理的消費に関する消費者教育を深化させることもできる。倫理的消費に取り組むことで、企業価値やイメージの向上、商品・サービスの差別化による競争力の創出等、事業者にもメリットをもたらす。

倫理的消費の考え方を周知し、その結果、義務を課さなくても倫理的消費の取り組みが浸透すれば、行政はそれぞれの主体の取り組みを支援するだけでよい。倫理的消費を浸透させることで、消費者志向経営との両輪を形成し、持続可能な社会に向けて消費者と事業者との協働関係を実現することが重要である。

◇◇◇

その後の意見交換では、事業者と消費者との情報格差の是正に向けた取り組みや、何がエシカルな商品・サービスなのか消費者に正しく伝えることの重要性等について、活発な議論があった。

【政治・社会本部】

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