Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月15日 No.3319  日本ウクライナ経済合同会議をキエフで開催

日本とウクライナの外交関係樹立25周年ならびに「ウクライナにおける日本年」に当たる今年、両国間の貿易・投資関係の拡大と深化に向けて政策対話を深める観点から、経団連(榊原定征会長)のウクライナ部会(朝田照男部会長)は5月30日、キエフでステパン・クービウ第一副首相兼経済発展・貿易大臣を共同議長とする第7回日本ウクライナ経済合同会議を開催した。キエフで4年ぶりの開催となる同会議では、日本側から30名、ウクライナ側から50名余が参加、ウクライナのビジネス環境や農業、インフラ等の個別分野における協力の可能性について活発な意見交換が行われた。各セッションの議論の概要は次のとおり。

クービウ第一副首相、朝田部会長(中央)を共同議長とする合同会議出席者

■ ウクライナのビジネス環境をめぐる現状と課題

第1セッションでは、ウクライナの外資誘致促進策や国営企業の民営化の見通し、IT産業のポテンシャルを含め、ウクライナのビジネス環境の現状等に関する説明を踏まえ、今後の課題等について討議した。経団連側からは、ウクライナの優秀なITエンジニアのメリットを指摘するとともに雇用する企業に対する恩恵付与等を要望した。

■ ポテンシャルの大きな農業・インフラ分野

続く第2セッションでは、世界有数の生産・輸出量を誇るひまわり油や小麦をはじめとする穀物を中心とした農業分野における二国間協力の可能性や輸送面での課題等について意見交換を行った。

第3セッションでは、双方の関心が高い輸送・インフラ分野について議論を深めた。ウクライナ側から広大な国土を活かした再生可能エネルギーのポテンシャルや鉄道、道路、港湾、空港等の整備計画、民営化プロセス等の紹介があり、経団連側からは海外での質の高いインフラ整備の実績や経験に基づく協力の可能性を指摘するとともに、PPP(官民パートナーシップ)やコンセッション方式を通じたインフラ開発プロジェクトへの参画を具体的に要望した。

■ 成果と今後の取り組み

ポロシェンコ大統領(左)への表敬
(提供:ウクライナ大統領府)

合同会議終了後、一行はペトロ・ポロシェンコ大統領とヴォロディミル・フロイスマン首相をそれぞれ表敬し、経済運営の成果や国内構造改革に向けた取り組みに関する説明を聞くとともに、この場でもPPPやコンセッション方式による各種インフラ案件への参画への期待を表明した。

最近2年間、日ウクライナ投資協定発効(2015年11月)、ポロシェンコ大統領の訪日および経団連来訪(16年4月)、今年の日ウクライナ外交関係樹立25周年・「ウクライナにおける日本年」開催など両国関係が新たな次元を迎えている。

こうしたなか、貿易・投資にかかわる課題や有望な産業分野等について、ウクライナ政府首脳らと双方向で具体的な議論を深め、同国のビジネス環境上の諸課題の改善を直接訴求した意義は大きい。

次回の合同会議は、ビジネス環境等について今次会議で要望した事項の進捗を十分フォローしながら、18年以降に東京で開催する方向でウクライナ政府と調整していく。

日本ウクライナ経済合同会議結団式

経団連のウクライナ部会は5月22日、日本ウクライナ経済合同会議結団式を開催し、外務省の相木俊宏欧州局審議官、経済産業省の中川勉通商政策局審議官から最新のウクライナ情勢や日ウクライナ経済関係について聞いた。概要は次のとおり。

■ ウクライナをめぐる情勢および日本との関係

当面の課題は東部2州の安定だが、すべての当事者がミンスク合意を完全に履行しているとはいえず、停戦違反が続いている。今後、トランプ政権がウクライナ問題にどう関与していくか注視したい。

内政面では汚職対策はじめ国内改革はゆっくり前進。外交面ではEUとの関係を着実に強化する一方、2014年3月のクリミア「併合」以降、対露関係は悪化している。こうしたなか、わが国はウクライナの改革努力を後押しするため、約18.6億ドルの支援を表明(米独に次ぐ第3位)。また、両国は外交関係樹立25周年の今年を「ウクライナにおける日本年」と位置づけ、日本企業等の協力も得てウクライナ各地で約60の日本関連行事を実施・予定している。

■ ウクライナの経済情勢や投資先としての魅力

15年にマイナス9.9%を記録したGDP成長率が16年に2.3%へと大幅に改善するなど、ウクライナ経済は好転している。しかし、政府支配地域と被占領地域の間の鉄道路線が封鎖されるなど物流が分断、東部に埋蔵する発電用石炭の確保が困難になっていることは懸念材料で、17年の成長率は1.9%に減速すると予測されている。

ウクライナの強みの1つは労働市場の競争力である。他の中東欧諸国と比しても人件費が低く、高い教育水準・技術力を背景に、労働集約型の産業が成長する可能性を秘めている。また、昨年11月の第6回合同会議において経団連が提起した課題や要望も踏まえてか、厳しい外貨取引規制は段階的に緩和されつつある。

政府では、下水処理場改修事業や石炭火力発電所の効率改善支援など、経済協力を継続するとともに、引き続きウクライナに関する正確な情報を入手し、共有していく。

【国際経済本部】