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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月22日 No.3320 マイナンバー制度を活用した税務申告制度について聞く -行政改革推進委員会企画部会

経団連は6月2日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会企画部会(大久保秀之部会長)を開催し、中央大学法科大学院の森信茂樹教授から「マイナンバー制度を活用した日本型記入済み申告制度の実現」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ マイナンバー制度による新たな社会インフラ

マイナンバー制度の導入を通じて、(1)「マイナンバー・法人番号」(2)実社会やオンラインの本人確認手段である「マイナンバーカード」(3)行政機関が保有する特定個人情報の確認等が可能なポータルサイトである「マイナポータル」――という3つの新たな社会インフラが構築された。マイナポータルに送付される税務関連情報や民間情報をe-Tax(国税電子申告・納税システム)に転記する仕組みができれば、日本型の記入済み申告制度が実現し、納税者の利便性は大幅に向上する。

■ 記入済み申告制度の概要

欧州諸国の導入している記入済み申告制度は、雇用主や金融機関等が提出する法定調書に基づき、税務当局が納税者の所得金額や控除金額をあらかじめ申告書に記入して提示し、納税者が記入内容を確認、必要に応じて修正して申告する仕組みである。

わが国でも、すでに税務当局は納税者の申告内容と取引の相手方が提出する法定調書の内容をマイナンバーでマッチングさせている。税務当局や金融機関などが取得する納税者情報を、マイナポータルを利用して納税者が入手可能とすれば、それをe-Taxにつなげて納税申告する制度(日本型記入済み申告制度)が可能になる。

このようにマイナポータルへの情報提供とe-Taxを組み合わせれば、給与所得者が選択的に自主申告をする制度に向けての道も開ける。

自ら納税額を確定する自主申告制度は民主主義の原点であり、それによって、行政サービスや公共事業に対する関心も高まると考えられる。税務当局においても、申告内容を精査する負担が軽減され、事務の効率化が期待される。

■ 今後の課題

自主申告の実現に向けた課題として給与所得控除水準の見直しが挙げられる。

勤務必要経費(図書費、衣服費等)や資格取得費(弁護士、税理士等)等の合計が給与所得控除額の半分を超えた場合、確定申告を通じてその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から控除できる「特定支出控除」が存在する。しかしながら、概算控除である給与所得控除の水準が高く、この制度の利用者が少数にとどまるため、確定申告をする納税者が増えない。給与所得控除水準を見直し、自主申告へのインセンティブを高めるべきである。

医療費控除に関しては、医療保険事業を担う市町村にとって、確定申告の開始時期までにマイナポータルに情報を提供する作業負担が大きいという課題がある。この点は、例えば1月から11月までの医療費情報を提供し、12月は必要に応じて納税者が入力して対応することが考えられる。また、医療費控除の対象の大半を占める自由診療について、医療機関からマイナポータルに情報を提供させることについては、日本医師会との調整を進めていく必要がある。

【産業政策本部】

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