Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月22日 No.3320  米国税制調査ミッションを派遣 -税制改革の最新動向を調査

経団連および21世紀政策研究所(三浦惺所長)は6月6日から9日にかけて、21世紀政策研究所国際租税研究会研究主幹の青山慶二早稲田大学大学院教授を団長とする米国税制調査団をワシントンDCに派遣した。調査団には、経団連会員企業の米国拠点の税務部門の責任者らが参加した。

米国のトランプ政権は、4月26日に税制改革に関する基本方針を公表している。今後、政府・議会で、下院共和党が2016年6月に公表した“A Better Way”の内容も踏まえながら、議論を深めることが想定されている。この米国における税制改革の内容によっては、日本企業の米国事業やグローバル・サプライチェーンに大きな影響が生じるとともに、同改革とグローバルな国際租税制度との関係など、日本企業にとって留意すべき点が多く生じるため、今回最新の動向を調査すべく税制調査団を派遣したもの。経団連として税制に特化した訪米調査団は、01年の連結納税制度の調査以来16年ぶりである。

現地では、上院、下院における共和党・民主党のそれぞれの税務担当スタッフや米国財務省などの法案の作成にかかる関係者のほか、連邦議会調査局やUSCIB(米国国際ビジネス評議会)、OFII(Organization for International Investment)など関係する経済団体、シンクタンク、法律事務所を訪問した。

とりわけ、日本企業として関心の高い、国境調整措置(Border Adjustment Tax)や利子控除制限について日本経済界としての懸念を伝えるとともに、法人税率の引き下げや、国境調整措置および利子控除制限の導入、テリトリアル課税への移行、海外留保利益に対する課税、税制改革に伴う財源の確保など、今回の税制改革案の中心となる内容に関し、それぞれの制度の設計にかかる基本的考え方や今後の見通しについて、これまで議会等で提案された税制改革案の内容などを踏まえながら意見交換を行った。加えて、今回の税制改革法案について予想される成立・施行の時期や経過措置のあり方などについても関係者から意見を聴取した。

また、OECD、G20が進めるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの米国内での実施状況やBEPSプロジェクトを踏まえた国際租税制度の潮流との関係について意見交換を行うとともに、13年の合意後、いまだ上院で批准がされていない改定日米租税条約の早期批准を関係者に働きかけた。

さらに、議会・政府関係者に対し、納税者の予見可能性を高める観点から、日本企業を含め米国内外のステークホルダーに、今後も適宜、議論の状況を開示するよう要請するとともに、関係する経済団体等に対し、今後の税制改革等におけるさらなる連携の強化を呼びかけた。

国際租税研究会では、今後もBEPSプロジェクトなどの国際租税にかかる課題の検討に加えて、米国税制改革の動向を注視するとともに、必要な調査や働きかけを行っていく。

◇◇◇

今回の米国税制調査については、6月27日に開催する21世紀政策研究所の報告会において、詳細を報告する予定である。

【経済基盤本部、21世紀政策研究所】