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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年7月13日 No.3323 カトラー・アジアソサエティ政策研究所副所長との懇談会を開催

米国トランプ政権は、TPP(環太平洋パートナーシップ)から離脱を表明したほか、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を議会に正式通知するなど、これまでの通商政策から方向転換する姿勢を示している。

そこで経団連は6月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、元USTR(米国通商代表部)次席代表代行のウェンディ・カトラー・アジアソサエティ政策研究所副所長から、トランプ政権の通商政策課題と日本への影響等について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ NAFTA再交渉

日本の対メキシコ直接投資はかなりの額に及び、NAFTAの再交渉は日本企業にも影響を与えると考えられることから、再交渉の行方を注視すべきである。特に、トランプ政権は、原産地規則の見直しを優先事項としている。

TPPの合意内容がNAFTA再交渉にどの程度反映されるかも重要である。米国はTPPから離脱しているので、NAFTAでは、TPPルール以上の合意を追求すると思われる。

交渉は、8月16日以降に開始され、来年早々の合意が目指されている。この期限設定の背景には、来年、メキシコで大統領選挙が予定されているため、選挙期間中は交渉が滞ってしまうことがある。5カ月での合意は不可能ではないが、かなり野心的な日程である。TPP合意を前提に交渉するのであれば可能であるが、新たな要素を盛り込む場合、早期の合意は困難になる。

■ TPP

たとえTPPが米国にとって100%満足できるものではなかったとしても、トランプ政権は時間をかけて詳細を検討することなく離脱という結論を急いで出してしまった。そして、アジア太平洋地域で生まれた米国の空白を中国が埋めようとしている。

しかし、TPPの今後については楽観している。なぜならば、米国抜きでもTPPを推進すべく、日本がオーストラリアやニュージーランドとともにリーダーシップを果たしてくれているからである。米国がいつかTPPに再加入することを期待している。

他方で、近日中に、日EU EPA(経済連携協定)の大枠合意に達することが予想される。、日本市場へのアクセスにおいて、欧州企業に比較して自らが不利な立場に置かれることへの懸念が米国企業から示されるようであれば、米国がアジア太平洋地域における高い水準の自由貿易交渉に戻る可能性がある。

■ 日米経済関係

日米経済対話を有益なものとするためには、両国が同じ目標を掲げ、協力できる領域を見つけることが重要である。

トランプ政権は二国間FTA(自由貿易協定)交渉を望んでいる。日本にとって、TPPは「天井」であり、TPP以上の合意は不可能と考えている。一方、米国にとって、TPPは「底」であり、二国間交渉により、TPPの合意内容にさらに上乗せすることを目指している。両国が率直な対話を行い、二国間FTA交渉を開始するかどうかを決めるべきである。

■ 国家安全保障を理由とする輸入制限

トランプ政権は、1962年通商拡大法232条に基づく、国家の安全保障を理由とした鉄鋼の輸入制限を検討している。

仮に実施された場合、米国内の鉄鋼業界には恩恵となるが、自動車や電子機器、航空業界等の鉄鋼を利用するさまざまな業界の輸出競争力を阻害することとなる。また、他国が同様の措置をとるだろうし、貿易相手国からの報復措置も懸念される。

【国際経済本部】

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