経団連は日欧経済関係の重要性を踏まえ、毎年欧州各国にミッションを派遣している。今年は7月6日から11日にかけて、ヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、越智仁委員長)の佐藤委員長を団長とする21社総勢35名がスペイン(マドリード、バルセロナ)、ノルウェー(オスロ)を訪問した。
各訪問先では主に各国・地域の経済情勢、日EU EPAの実現を視野に入れた二国間経済関係発展の方途、英国のEU離脱問題への対応等をめぐり、政府・経済界要人と意見交換した。各国の訪問先と懇談の概要は次のとおり。
■ スペイン
- 訪問先(マドリード)
フェリペ6世国王、マリア・ルイサ・ポンセラ・ガルシア商務長官、アルベルト・ナダル・ベルダ予算・歳出長官、クリスティーナ・セラーノ・レアル外務・協力省国際経済関係局長、スペイン経団連(CEOE)
- 訪問先(バルセロナ)
カタルーニャ州企業連合(Foment del Treball Nacional)、カタルーニャ州投資促進局(ACCIO)
スペインは、財政および労働市場の改革をはじめとする構造改革の断行により危機を克服し、2015年以降、GDP成長率3%台を維持している。高い失業率も徐々に低下傾向にあるとのことで、来年、外交関係樹立150周年を迎える日本との関係強化に強い期待が示された。政府・経済界とも日EU EPAの大枠合意を歓迎しており、EPAを活用して二国間経済関係の強化とともに、スペインが強みを持つ中南米、北アフリカ市場や日本が強みを持つアジアなどの第三国市場における協力などにつなげていきたいとの認識を共有することができた。
スペインは大陸欧州のなかでイギリスとの関係が強いものの、英国のEU離脱交渉には、あくまでもEUの一員として交渉に臨むとのスタンスが示された。現在ロンドンに立地している欧州医薬品庁(EMA)の移転先として、中央政府、カタルーニャ州政府が連携して、州都バルセロナへの誘致に強力に取り組んでいるとのことであり、イギリスのEU離脱後を見据えた活動がすでに開始されている。
■ ノルウェー
- 訪問先(オスロ)
トーネ・スコーゲン外務副大臣、イングヴィル・スミーネス・ティブリング・イェッデ石油・エネルギー副大臣、ディレク・アイハン 貿易・産業副大臣、ブラーゲ・バクリーエン財務副大臣、ノルウェー産業連盟(NHO)
ノルウェーは、石油・ガスの産出国であり、欧州自由貿易連合(EFTA)の一員として、欧州経済領域(EEA)協定を通じてEUと緊密な経済関係を構築している。近年の石油価格下落等の影響を受け、石油依存からの脱却に向けて、産業の多角化が課題となっている。可能性があるのは伝統的な産業を基盤とした分野であり、水産物の持続可能な養殖、太陽光発電や洋上風力発電等の再生可能エネルギー、最先端技術を駆使した二酸化炭素回収貯留プロジェクトなどが挙げられた。
日EU EPAの大枠合意については、自由貿易推進の立場からこれを歓迎するとのコメントがあった。他方、ノルウェーはEU非加盟のため、日本市場において、競争上、不利な立場に置かれることに危惧を感じており、政府・経済界関係者からは、速やかな日ノルウェーFTA交渉開始への強い希望が表明された。経団連側からは、日本との関係強化への高い関心に感謝するとともに、FTAを通じてwin-winの成果がもたらされるという展望を、日本、ノルウェー双方が共有することができるか否かが、FTA交渉開始のカギとなると回答した。
【国際経済本部】