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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月3日 No.3326 国際情勢を踏まえた今後のエネルギー政策について聞く -資源・エネルギー対策委員会企画部会

政府は近く、エネルギー基本計画に関する検討を始める見込みである。そこで、こうした動きに対応するべく、経団連の資源・エネルギー対策委員会企画部会(長井太一部会長)は7月11日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本エネルギー経済研究所の小山堅常務理事から、国際情勢を踏まえた今後のエネルギー政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 原油価格・ガス価格をめぐる動向

足もとの原油価格は、産油国の協調減産に下支えされてきたが、シェールオイルの増産や世界経済の停滞に伴って下落する可能性がある。一方で、産油国の地政学リスクという上昇要因も存在することから、当面の価格動向には不透明さが残る。

2020年代前半までを射程に入れると、足もとの低油価による投資の減少で生産の増加が需要に追いつかず、原油価格は70ドル/バレル超まで上昇する可能性がある。天然ガスについても、同様の構造により将来の需給タイト化が起こり得る。

アジア向けガス価格は従来、原油価格連動が主となっており、足もとの原油価格下落を受け大きく下落した。今後は、米国産LNG輸入の拡大等により、スポット契約や仕向地条項を設けない契約といった新たな契約形態が登場し、市場で最適な選択肢が模索されていくと予想される。

■ アジアを取り巻くエネルギー情勢

中国はエネルギー分野において、輸入依存度の上昇、石炭に起因する大気汚染、国営企業が支配する市場、そして大量の新設が進む原子力発電所の安全確保という、いわば「中国版3E+S」の課題に直面している。

米国が自給を実現し欧州では需要が減少するなか、中国をはじめアジアだけが、エネルギー輸入への依存を深めることになる。これは中東依存度の上昇に直結する。

中東に大きな影響力を有する米国のトランプ政権は、自国の国益追求の手段としてエネルギーを活用するとの方針を表明していることから、中東を含むエネルギー市場への影響が注目される。アジア市場向け石油・LNG等の輸出動向も注目される。

ロシアは、総輸出額の7割を占める石油・天然ガスの大部分を欧州に輸出してきた。経済制裁と油価下落のもとで、今後中国のみならず日本とのエネルギー協力深化を模索していく可能性がある。

■ 日本のエネルギー政策

現行のエネルギーミックスは、S+3Eの同時達成を念頭に、目標間のバランスを取った一種の唯一解として策定された。単独でS+3Eのすべてを満たすエネルギー源は存在しないことから、2030年以降もすべての選択肢を活用してベストミックスを追求すべきことは変わらない。

現在、電力・ガスシステム改革をめぐる詳細設計の議論が進んでいるが、市場原理と政策的に望ましいミックスとをいかに整合させるかが課題である。

エネルギー基本計画の見直しについては、エネルギーミックスの数値を見直すのではなく、重要課題について議論する場になるのではないか。論点としては、原子力の新増設・リプレースや、再生可能エネルギーの発電コスト低下と供給間欠性に対応するための「統合コスト」の増加、化石燃料の調達上重要な対中東・対米関係のあり方などが想定される。

【環境エネルギー本部】

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