1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2017年11月16日 No.3339
  5. トルコの内政・外交の現状や日トルコ経済関係の展望等聞く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年11月16日 No.3339 トルコの内政・外交の現状や日トルコ経済関係の展望等聞く -日本トルコ経済委員会

昨年7月のクーデター未遂事件後に発令された非常事態宣言が重ねて延長されるなど、トルコをめぐる情勢は引き続き予断を許さない。一方、日本との経済関係では、9月末に日・トルコ経済連携協定(EPA)交渉第7回会合が東京で開催され、二国間貿易・投資のさらなる拡大に向けて、早期の妥結が期待される。

そこで、経団連の日本トルコ経済委員会(山西健一郎委員長、斎藤保委員長)は11月1日、外務省の岡浩中東アフリカ局長と経済産業省の中川勉通商政策局審議官から説明を聞き懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ トルコの治安状況

トルコでは、今年の年明け以降、特に目立ったテロは発生しておらず、治安は落ち着いている。

第一の理由は、中東地域におけるISIL(イラク・レバントのイスラム国)の勢力の低下である。トルコ国境にまで及んでいたISILの支配地域は、トルコ軍の「ユーフラテスの盾」作戦(注1)や、米国の支援を受けたクルド勢力との戦闘等により大幅に縮小している。このまま推移すれば、来年にはISILの支配地域はほぼ消滅すると考えられる。

第二の理由は、昨年7月に発生したクーデター未遂事件である。ギュレン師(注2)が率いるグループと目される軍の一部勢力による武力行使の結果、200人以上の市民が犠牲となった。このため、国民の約7割はギュレン・グループ関係者を排除する政府の対策を支持しているのが現状である。

■ トルコの内政・外交

今年4月、現行の議院内閣制から実権型大統領制への移行の是非を問う国民投票が実施された。賛成51.4%、反対48.6%という僅差で承認されたものの、イスタンブールやアンカラ等の大都市では反対が多数を占めた。実権型大統領制に移行する2019年には、大統領・議会ダブル選挙も実施予定であることから、エルドアン大統領の今後の内政の舵取りが注目される。

一方、外交に目を転じると、EU加盟交渉が難航しているとはいえ、貿易・投資両面で半分を占める欧州諸国、さらに米国との関係強化は引き続き重要なカギを握る。また、トルコは他に類を見ない親日国であり、戦略的パートナーとしての日本に強い期待を寄せている。

■ 日・トルコEPA交渉の現状

14年12月の第1回会合以降、これまで7回のEPA交渉を行ってきた。二国間貿易では、日本の大幅な出超(輸出約4000億円/輸入約600億円)が続いているが、トルコへの輸出品目の6割以上が有税品目であることから、機械や自動車等の鉱工業製品について、関税撤廃を要求していく。逆に、トルコ側から関税撤廃を求められているのは、繊維衣料製品や農産品等である。

日本政府としては、攻めるべきは攻め、守るべきは守りつつ、日・トルコEPAの早期妥結に向けて、交渉を加速させていく。

(注1)「ユーフラテスの盾」作戦=トルコが国境を接する北シリアにおいて、シリア反体制派と連携して国境地域からISIL戦闘員を排除する作戦

(注2)ギュレン師=イスラム道徳に基づく市民運動の指導者。ギュレン運動は当初、エルドアン政権と協力関係にあったが、13年末のエルドアン政権の大規模汚職事件を機に関係が悪化している

【国際経済本部】

「2017年11月16日 No.3339」一覧はこちら