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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月11日 No.3345 2018年は極寒ながら静かな幕開け -ワシントン・リポート<24>

年末年始のワシントンDCは零下10度前後まで冷える日が続いたが、大雪はなく比較的落ち着いた年明けとなった。昨年1年のトランプ政権の総括については多々議論があるが、米シンクタンクAEIフェローのマーク・ティーセン氏(ジョージ・W・ブッシュ大統領スピーチ・ライター)は、年末のワシントン・ポストに、まず「就任初年でトランプ大統領が成し遂げたベスト・テン」を、3日後に「ワースト・テン」を寄稿した。

「ベスト・テン」には、(1)シリア化学兵器使用への対応 (2)対ロ強硬政策 (3)エルサレム首都認定 (4)パリ協定離脱 (5)NATO同盟国の費用負担強化 (6)IS弱体化 (7)アフガン撤退再考 (8)税制・規制改革 (9)保守派判事任命 (10)クリントン派政治組織の打破――を挙げ、「ワースト・テン」には、(1)党派対立激化 (2)共和党身内攻撃 (3)シリア・アルカイダ助長 (4)テロリスト捕虜の刑事処分継続 (5)FBIや情報機関への攻撃 (6)有害なツイート (7)コーミーFBI長官罷免 (8)ロシアの大統領選介入の完全否定 (9)ロイ・ムーア支持 (10)オルト・ライト派の完全否定回避――を挙げている。個々の指摘の妥当性には、立場によっても議論があろうが、多面的に評価すべき点では参考になる。

これに関連して、世論調査機関のピュー・リサーチ・センターは、2017年の注目すべき17点を挙げたレポートを年末に発表し、いくつか興味深い点を指摘している。

党派対立については、10の政治的価値に関する共和党系と民主党系の意見の乖離が、1994年の15%ポイントから36%ポイントに拡大している。トランプ大統領が国際問題に適切に対処しているとの見方は22%にとどまり、米国が国際的に好感をもたれていると答える人は、オバマ政権末期の64%から49%に落ちている。

トランプ政権の初期60日に関するニュースの60%がネガティブで、その比率はオバマ政権の3倍、ブッシュ政権、クリントン政権の2倍となっている。他方、ニュース・メディアが政権チェック機能を果たすとの声は民主党で90%に対し、共和党では42%にとどまる。そうした声は、16年初期には民主党で74%、共和党では77%から上がっていた。

経済・社会面では、移民が引き続き米国の労働人口の伸びを支えていくと予測されるなかで、ヒスパニックのアイデンティティーが世代を経るにつれて弱くなっていると指摘している。さらに、大学教育に対して、民主党系の72%がポジティブに評価しているのに対し、共和党系では2年前の54%がポジティブ評価から今日では58%がネガティブ評価となっている。

年が明け、政治面では、今年の中間選挙から3年後の大統領選挙を控え、民主党が挽回するチャンスと指摘する声は多いが、その民主党自体の軸が揺らいでおり、再生の道筋がみえないとの声も多い。経済面では、米国のNAFTA離脱への懸念が高まるなか、年末に自動車業界幹部がペンス副大統領に会い、アーカンソー、アイオワ、ミシガン、テネシー諸州の知事がNAFTA継続の必要性を行政府に訴えた。さらに年明けには、農業州の上院議員らがトランプ大統領らに会っている。

18年の極寒ながら静かな幕開けが、トランプ政権の背景にある米国社会自体の不確実性が収まり安定化に向かう新たな潮流の予兆となることを願う。

(米国事務所長 山越厚志)

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