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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月18日 No.3346 2018年版経労委報告を公表 -働きがいと生産性向上、イノベーションを生み出す働き方改革

記者会見する工藤副会長・経営労働政策特別委員長

経団連(榊原定征会長)は1月16日、春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンスを示す「2018年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を公表、記者会見を行った。同委員会の委員長を務める工藤泰三副会長は、記者会見の冒頭、18年版報告の副題「働きがいと生産性向上、イノベーションを生み出す働き方改革」について、「働きがい」という言葉を入れることによって、働き方改革は企業だけでなく、社員にとってもメリットのある重要な取り組みであることを強調していると語った。
報告書の主なポイントは次のとおり。

■ 第1章 働き方改革の推進と労働生産性のさらなる向上

働き方改革の推進と、労働生産性向上に向けた一体的な取り組みを柱として、健康経営のさらなる展開や多様な人材の一層の活躍推進、介護離職予防に向けた職場環境の整備などに取り組むことが社内の好循環につながるとの考えを示している。

■ 第2章 雇用・労働分野における諸課題

長時間労働と過重労働の防止をはじめとする労働時間制度改革や、同一労働同一賃金の実現に向けた法制化への対応といったパート・有期・派遣労働をめぐる動向などの諸課題を取り上げ、経団連の考え方や労務管理上の留意点などを整理した。

■ 第3章 2018年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス

「賃金引き上げと個人消費の動向」では、賃金が上昇しても個人消費が増えない主な要因として将来不安と可処分所得の伸び悩みを挙げたうえで、政府による社会保障制度の抜本改革に加え、多様な人材の活躍推進による雇用と所得の両面から将来の安心感を高めていく必要があると説いた。

「同一労働同一賃金の実現に向けた賃金制度のあり方」では、政府のガイドライン案に記載の待遇について、実務的なチェックポイントや自社の制度を見直す際の方向性と留意点を示している。

連合「2018春季生活闘争方針」への見解

月例賃金において、幅のある要求方針を掲げていることは現実的な対応とした一方、多くの企業が複数年にわたって大幅な引き上げを行ってきた状況下では、幅があるとはいえ「2%程度」というベースアップ要求は極めてハードルが高いと指摘。中小組合で掲げている「総額1万500円以上」との要求については、実態からかけ離れた水準であると疑問を呈した。

経営側の基本スタンス
経営側の基本スタンス

デフレからの完全な脱却と経済の好循環のさらなる拡大に向けて、賃金引き上げのモメンタムを一層強化していくとの決意を表明。そのうえで、各企業の賃金はさまざまな考慮要素を勘案しながら、適切な総額人件費管理の下、支払能力を踏まえて決定するとの大原則に則り、個人消費活性化に向けた「3%の賃金引き上げ」との社会的期待を意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討を行うよう呼びかけている。特に、収益が拡大・高水準で推移している企業においては、多様な方法による年収ベースの賃金引き上げを基本としながら、月例賃金や総合的な処遇改善への積極的な対応を求めている。

さらに、賃金面での対応に限らず、総合的な処遇改善に向けて、基本給の変更を伴わない所定労働時間の短縮や教育訓練費の増額、育児・介護関連施策の充実、福利厚生面での拡充など、自社の実情を踏まえた検討を提唱している。

また、働き方改革推進の一環として、労働生産性が向上し、時間外手当が減少した場合、何らかのかたちで社員の処遇改善等へつなげていく方針を明らかにすることが望ましいとした。

パート・有期契約社員の処遇改善についても重要であることから、正社員化の推進や賃金・時給の引き上げ、福利厚生面の拡充、正社員との不合理な処遇格差の解消に前向きに取り組むよう呼びかけている。

最後に、政府に対して、消費税率10%への引き上げや社会保障制度の抜本改革、財政規律の確保に向けた実行プロセスの明確化などを強く求めた。

【労働政策本部】

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