Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月18日 No.3346  ダイバーシティ・マネジメントセミナーを開催 -成長戦略としてのダイバーシティ

経団連は12月18日、東京・大手町の経団連会館で内閣府との共催により「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。2013年度から開始した同セミナーは今年度で5年目を迎え、企業の管理職やダイバーシティ推進の担当者ら約180名が参加した。

第1部では、経団連の柄澤康喜女性の活躍推進委員長による基調講演、第2部では、「見えてきたダイバーシティによる成果」と題し、先進的な取り組みを進める企業として、LIXILの中垣淳日本人事総務本部人事部長、日本航空の小田卓也執行役員人財本部長、ダッドウェイの白鳥由紀子取締役副社長を迎え、ダイバーシティの取り組みによる成果や男性を巻き込んだ意識改革等について話を聞いた。基調講演の概要は次のとおり。

■ 基調講演「ダイバーシティ推進の成果と今後の展望」

講演する柄澤委員長

2013年、安倍首相がアベノミクスの柱の1つとして「ウーマノミクス」を掲げて以来、経済界と政府で一体となって取り組みを進めてきた結果、女性の労働参加・活躍状況は確実に改善の兆しをみせている。12月に経団連が公表した「女性活躍の次なるステージに向けた提言」では、この流れを加速させて経済成長につなげるための「攻めのウーマノミクス」を提唱した。

女性活躍の推進にあたっては、企業・経営者が納得感を持って進めていくことが重要である。女性活躍の意義を企業の視点から整理すると、労働供給の増加のみならず、働きやすい環境の構築を通じたプロセス・イノベーションや女性視点を通じたプロダクト・イノベーションの促進、さらには高い購買力を持つ女性による消費拡大や新しい市場の創出等であり、すでに多くの企業でこうした成果が得られつつある。

提言では、さらなる女性活躍を通じた経済成長を確保する観点から、5つのイニシアティブを提示している。第1に、“ダイバーシティ・インクルージョン”の経営カルチャーへの浸透、“アンコンシャス・バイアス”(無意識の偏見)の打破、ITの活用などによる仕事と育児の両立支援強化、早期キャリア教育など「新しい働き方」の実現。第2に、女性のライフスタイルの多様化に対応した「新しい市場」の拡大。第3に、ESG投資への注目が集まるなか、女性活躍に関する企業情報の自主的な開示による「新しい投資」の拡大。第4に、各界の女性リーダー同士の交流を通じた「新しい外交」。第5に、だれもが複線的な人生の実現を目指すことのできる「新しい生き方」である。

グローバル化の時代にあって、日本企業の人材を取り巻く多様性はこれまでになく高まっている。当社も例外ではなく、04年に英国保険会社のアジア損害保険事業を買収して以降、何度かのM&Aを行う過程で「ミッション、ビジョン、バリュー」を見直し、価値観を相互に理解・共有していった。MS&ADグループはもともとは6つあった損害保険会社が01年の合併と10年のグループ統合等を経て今のかたちになったものであり、M&Aの過程でダイバーシティを自然に受け入れてこられたのも、グループ統合までの過程で互いの個性を認め、活かし、新しい企業文化を構築していく経験があったことも影響しているだろう。

日本企業のダイバーシティは、国籍、年齢、LGBTなどにも広がりつつある。「やらざるを得ない」という姿勢ではなく、「女性活躍」と同様、いわば企業の発想力・展開力の源泉という観点から取り組む必要がある。

ダイバーシティ推進を確実なものにする重要なポイントは3つある。第1は、規制改革や社内制度改革等によりフレキシビリティーを高めていくこと。第2に、社内外の開示を進め、透明性を高めること。第3はイノベーション。この3つの視点に共通するのは、かつて日本経済が右肩上がりだった時代に固定化した制度を変えていくことである。取り組むべき課題は多いが、活力ある未来に向け、企業・社会には真摯で着実な姿勢が問われている。

【政治・社会本部】