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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月1日 No.3348 ダボス会議におけるトランプ演説の反響 -ワシントン・リポート<27>

「スティーブ・バノン氏があのスピーチを視聴したら泣いていただろう」――。

ニュース解説メディア「Vox」は、トランプ大統領のダボス会議でのスピーチを論評する記事の副題でこう記した。

アメリカ・ファーストを標榜するトランプ大統領が、グローバリストの集まりと評されるダボス会議に参加すること自体が物議を醸した。米国大統領の参加は、2000年のクリントン大統領が初めてで、トランプ大統領の参加はそれ以来ということからも注目された。

1月26日、ダボス会議の最終日に行われたスピーチのなかでトランプ大統領は、「アメリカ・ファーストは、アメリカ・アローン(孤立)を意味しない」と述べ、国際的なルールや秩序の強化に積極的に取り組む姿勢を示した。他方、「米国はもはや不公正な経済貿易慣行を見過ごさない」と述べ、自由貿易は「公正で相互的でなければならない」と述べた。

また、「アメリカはビジネスに対して開かれており、再び競争力を有している」と述べるとともに、税制改革法案の通過も背景に好景気が続き株価も堅調なことなどを指摘し、「米国で雇用し、工場を建て、成長するためのまたとない機会」と強調した。さらに「皆さんを、素晴らしい未来をともにつくるパートナーとして招きたい。アメリカで会えるのを楽しみにしている」とまで述べ、ビジネスマン大統領のイメージをあらためて打ち出した。

そのうえで、「われわれは、忘れ去られてきたコミュニティーを再興しており、子どもたちに偉大な仕事、安全な家、よりよい生活をもたらす米国の夢を実現しようとしている」と大統領らしいメッセージも発している。

冒頭の論評記事の表現にも示されているとおり、大統領選挙中からの過激な言動を支えてきたスティーブ・バノン氏がホワイトハウスを去り、反移民強硬派スピーチライターのでバノン氏が評価しているといわれるスティーブン・ミラー氏が一般教書演説の準備に回るなか、今回のスピーチは国際派と目されるゲリー・コーン国家経済会議委員長らが用意したとみられている。

トランプ大統領がダボスで受けた米テレビCNBCのインタビューで、「十分によいものになればTPPもある」と述べたことも、米国のTPP復帰の可能性が出てきたと受け止められた。さらに、スピーチの前夜には、トランプ大統領と欧州主要企業トップとの夕食会が開かれ、トランプ大統領が米国での雇用と投資を期待し、欧州企業からは税制改革を評価する発言が出たと報じられている。総じて、今回のトランプ大統領のダボス会議参加は、大統領のプラグマティックなメッセージを印象づけたとの評価になっている。

ハリファックス国際セキュリティ・フォーラムのピーター・ヴァン・プラフ理事長に至っては、「ダボス・エリートたちにとって、米国さらには諸外国において普通の人々が何を欲しているかを理解するのに、億万長者のビジネスマンでありながら彼らより長けているポピュリスト大統領の話を聞くことは重要」と述べたとニューヨーク・タイムズは伝えている。

(米国事務所長 山越厚志)

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