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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月15日 No.3350 第11回WTO閣僚会議の結果と今後のわが国の通商政策の方向性について聞く -通商政策委員会企画部会

経団連は1月29日、東京・大手町の経団連会館で通商政策委員会企画部会(神戸司郎部会長)を開催し、外務省経済局の大嶋勝国際貿易課長ならびに経済産業省通商政策局の河本雄通商機構部参事官(全体総括)から、第11回WTO閣僚会議(MC11)の結果と今後のわが国の通商政策の方向性について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 外務省・大嶋国際貿易課長

ブエノスアイレスで開催された咋年12月のMC11では、WTO全加盟国の合意による閣僚宣言は発出されなかった。分野別の議論では、農業の国内支持、漁業補助金、開発、電子商取引、サービス等の5分野について重点的に議論したが、新たな貿易自由化・ルールへの合意には至らなかった。背景には、開発を含むドーハ・ラウンドを継続すべきだとする途上国と、新たなアプローチ・分野への取り組みが不可欠とする先進国との意見対立がある。貿易と開発をめぐる途上国によるイデオロギー的な主張に起因する対立がここにきて深刻化している。トランプ政権下の米国が従来のように積極的に議論を牽引することを期待できないなか、全加盟164カ国の合意の困難さがあらためて浮き彫りとなった。

こうしたなか、日本は電子商取引の議論を主導し、ICT分野での途上国への支援パッケージも梃子に働きかけた結果、米国とEUを含む70の国・地域により、交渉に向けた探求的な作業を開始する旨の声明発出に至った。このように、WTOへの否定的姿勢が懸念されている米国も、WTO自体は否定せず、自らの関心分野については関与の姿勢を示している。

そのほか、零細・中小企業、投資円滑化等についても、有志国でそれぞれ閣僚声明が発出された。これはWTOの今後の活動を示唆する新たな取り組みのかたちといえる。

他方、環境物品協定(EGA)、サービスの貿易に関する新たな協定(TiSA)など複数国間の自由化交渉は中断している。わが国は従来から早期の再開を主張しているが、米欧を含む産業界の声も重要である。

■ 経産省・河本通商機構部参事官

MC11の成果は限られたが、電子商取引に関する有志国の取り組みが立ち上がったことは重要な成果といえる。有志国とはいえ、WTOの場で議論が開始されることになったのは電子商取引・デジタル貿易の国際ルール形成に向けて大きな一歩である。わが国の通商政策の方向性としては、新興国の世界経済における存在感が高まるなか、レベル・プレイング・フィールド(公正な競争条件)の確保を推進することが重要な視点と考える。昨年12月に、わが国は米・EUとの三極で貿易大臣会合を開催し、過剰生産能力等の市場歪曲的措置等に対する協力について合意した。

また、経済のデジタル化が進むなかで、安全保障等を理由とする越境データ流通への制限やデータ国内保存の義務づけなど、デジタル保護主義が諸外国で広まることが懸念される。G7、G20やAPEC等、各種国際フォーラム等を通じた議論を進めたい。

さらに格差拡大といったグローバル化批判の高まりに対しては、しっかりと自由貿易を推進するとともに、包摂的で全員が参加できる貿易の実現に向けて中小企業等も活用しやすい経済連携を推進していく。

【国際経済本部】

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