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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月22日 No.3351 21世紀政策研究所がセミナー「2018年の国際情勢を展望する(第1回 欧州)」を開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は2月2日、シリーズセミナー「2018年の国際情勢を展望する」の第1回(欧州)を開催した。同研究所の研究プロジェクト「英国のEU離脱とEUの将来展望」の須網隆夫研究主幹(早稲田大学教授)、福田耕治研究委員(早稲田大学教授)、渡邊頼純研究委員(慶應義塾大学教授)、中西優美子研究委員(一橋大学教授)が参加し、英国離脱後のEUと国際秩序の変化について解説した。

■ Brexitで主権の回復を目指した英国

冒頭、須網研究主幹から、Brexit後の英国とEUの関係はどうなっていくのか、仮にHard Brexitになった場合に何が起こるのか、そしてこれまで度重なる危機に直面してきたEUはどのような方向に向かうのかという3つの問題提起を行った。

中西研究委員は、法的な視点からEUと加盟国の関係およびBrexitについて解説した。EUは、加盟国から主権の一部を移譲された超国家組織であり、英国がBrexitを選択した理由の1つとして、EUに移譲した権限を再び取り戻すことにあると述べた。そのため、この点が今後の離脱交渉やEU・英国間の将来の枠組み協定にも関わってくると分析。英国はBrexitで主権を取り戻す一方、EU加盟国として受けてきた恩恵を失うため、その代償は大きいと指摘した。

■ Hard Brexitで想定されるWTO上の問題

続いて渡邊研究委員は、これまでのBrexit交渉の経緯を整理し、Hard Brexitになった場合のWTO上の問題点について解説した。Hard Brexitの場合、英国はWTO加盟国として最恵国待遇(MFN)原則に則ってEU単一市場へアクセスすることになるが、そのためには英国独自の譲許表作成や関税割当の分割に伴う問題があることを明らかにした。また、Brexitを機に、経済統合体からの離脱によって第三国にかかる不利益をどう保障するのかという重要な問題が惹起されたと指摘した。

■ EU改革の行方

福田研究委員は、EU改革の行方について解説した。これまでのEUは、国際社会のなかで規範形成力と法制化によりグローバルガバナンスへ貢献してきたが、所得分配の不平等さから加盟国内の社会的な亀裂を生み出したことがポピュリズムの台頭につながり、EU改革の必要性が高まったと指摘した。そのうえで、今後のEU改革は、リスボン条約にうたっているヨーロッパの基本的理念の維持・強化を目指しつつ、制度改革や経済通貨同盟(EMU)の深化などを通じて統合の新たな段階へ進んでいくと分析した。

<パネルディスカッション>

後半のパネルディスカッションでは、Brexit交渉の行方、EU統合の見通しおよび第三国との関係について議論した。

渡邊研究委員は、Brexit交渉の行方について、モノの貿易とサービス・投資分野を切り分け、まずはモノの貿易について合意を先行させるなど、Hard Brexitを避けながら交渉が進んでいくだろうと分析した。

一方、中西研究委員は、将来の枠組み協定についてEUとカナダのFTAよりも法的には密接にリンクした内容に落ち着くだろうとの見解を示した。

福田研究委員はEUの今後について、希望する加盟国だけが統合を推進していく多段階・多速度的な統合が現実的な路線だろうと述べ、第三国との間では貿易協定を通じてEUの規範を世界に流布して経済発展につなげるだろうとの見解を示した。

◇◇◇

21世紀政策研究所では、今後も引き続き欧州情勢の変化を注視し、セミナー等を通じて情報発信を行っていく予定である。

【21世紀政策研究所】

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