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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年6月21日 No.3366 「米国の特許、通商政策、雇用問題」に関するセミナーを開催 -ワシントン・リポート<41>

経団連米国事務所は6月5日、ワシントンDCでピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン法律事務所(ピルズベリー)との共催によるセミナーを開催した。ピルズベリーは、ワシントンDCを含む世界21都市にオフィスを構え、1868年の設立以来、グローバルビジネスを行う企業に対してリーガルサービスを提供する総合法律事務所である。今般、同事務所がワシントンDCのオフィスに日本企業およびその国外関連会社に対象を特化した「ジャパンプラクティス」を立ち上げたことに伴い、セミナーでは、米国の特許実務の基礎、米国の通商政策が及ぼす日本企業への影響、雇用問題を含む米国の法制度・慣行を支える社会的背景を取り上げた。概要は次のとおり。

■ 米国の特許制度

特許制度の趣旨は、日米で共通しており、発明した技術等を世間に開示する対価として特許権(排他的独占権)を付与することで発明者の利益を保護するとともに発明者の情報開示を促し、さらなる発明や技術・産業の発展を促進する点にある。米国では、USPTO(United States Patent and Trademark Office)が審査を実施するが、特許として認められるためには、(1)新規性(特許出願日以前に同一の発明が公にされていない)(2)進歩性(特許出願日に公にされていた情報に基づき容易に発明することが難しい)――などの要件を満たす必要がある。米国特許法は連邦法のみで規定されているため、特許侵害訴訟は連邦裁判所のみが管轄権を有する。2017年に全米で生じた民事訴訟は27万4547件で、そのうち知財関係は1万682件、特許関係は3722件であり、いずれも近年減少傾向にある。

■ 米国の通商政策

保護主義的な通商政策を実施するトランプ政権は、米国の安全保障の脅威として、通商拡大法232条に基づき、日本から輸入する鉄鋼製品・アルミニウム製品にそれぞれ25%、10%の関税を課している。さらに、自動車および同部品に対する調査も開始され、6月22日までパブリックコメントが受け付けられており、7月19、20日に公聴会が開催される。商務省は5月の調査開始から270日以内の19年2月までに大統領に調査結果を報告し、その後90日以内に大統領が措置を決定することとなるが、いずれの日程も早まる可能性がある。

これら以外にも日本企業が他国と同様に今後、米国の輸出規制や金融制裁、対米投資規制等を受けるおそれがあり注意が必要である。輸出規制は対象製品・技術ごとに規制官庁が異なり、商務省(BIS)、エネルギー省(NNSA、DOE)、国務省(DDTC)、原子力規制委員会(NRC)等が管轄し、金融を含む経済貿易制裁は財務省(OFAC)が実施する。対米投資規制に関しては、大統領が米国の国家安全保障の脅威となる外国人による米国企業の買収を阻止する権限を持ち、現在、審査機関である対米外国投資委員会(CFIUS)の外資規制権限強化に向けた改正審議が行われている。

■ 米国の雇用制度

日米で雇用制度が大きく異なることに加え、日本の親会社から派遣されている幹部社員と現地採用社員の間の文化的差異も災いし、ときには訴訟問題に発展するケースもある。例えば、出身国や言語能力に基づく差別の禁止などに留意する必要がある。

また、米国社会の法制度・慣行の特徴として、司法当局によるアメとムチの政策が挙げられる。前者は、犯罪行為を防止し、発見するための規範および手続きを企業内に確立するなど効果的なコンプライアンスの実践を促すほか、会社責任の減免という副次的効果も持つ。一方で後者は、懲罰的賠償に象徴されるように厳しい内容となっているほか、解決に莫大な時間とコストを要することも考慮すべき要素である。これらを理解したうえで実務にあたることが肝要である。

【米国事務所】

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