1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2018年8月9日 No.3373
  5. 金融庁から企業情報開示の見直しをめぐる最近の検討状況について聞く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月9日 No.3373 金融庁から企業情報開示の見直しをめぐる最近の検討状況について聞く -金融・資本市場委員会資本市場部会

経団連は7月18日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会資本市場部会(松山彰宏部会長)を開催し、金融庁企画市場局の古澤知之審議官から「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」と「監査基準の改訂に関する意見書」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ ディスクロージャーワーキング・グループ報告

6月28日に公表したディスクロージャーワーキング・グループ報告では、投資家の適切な投資判断と投資家と企業との建設的な対話を促していくような企業情報の開示・提供を実現する観点から、(1)記述情報(非財務情報)の充実(2)ガバナンス情報の提供(3)情報の信頼性・適時性の確保に向けた取り組み――等を提案している。今秋以降、この報告に沿って内閣府令を改正するとともに、プリンシプルベースのガイダンスの策定や開示のベストプラクティスの収集などの取り組みを行う。

(1)では、有価証券報告書において、取締役・経営陣が積極的に自らコミットして経営戦略・ビジネスモデルについて見解を示すことが求められ、MD&A(経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析)においても、経営管理と同じセグメントで分析することが当然であり、経営者視点からみたリスクの重要度の順にリスク情報を開示することが必要である。また、MD&Aにおいて会計上の見積もり・仮定の開示が求められることとなるが、例えばIFRS(国際財務報告基準)適用企業が注記においてMD&Aで求められる開示内容をも充足する記載をした場合には、その旨を記載すれば、二重に開示する必要はない。

(2)は、内閣府令の改正により、役員報酬や政策保有株式に関する開示を大幅に拡充する。役員報酬については、報酬プログラム、報酬実績、報酬決定の枠組みそれぞれについて詳細な説明が求められる。

一方、政策保有株式に関しては、保有方針や保有の合理性を検証する方法の開示を求めるとともに、個別銘柄の開示対象を大きく拡大し、保有の目的・効果、相手方の保有の有無、保有株式数が増加した場合の増加理由、純投資と政策投資の区分の基準・考え方の記載などを求める。

(3)では、会計監査に関する情報の拡充として、監査人の選・再任の方針と理由、継続監査期間、監査業務と非監査業務に区分したネットワークベースの報酬額・業務内容の開示等を内閣府令の改正により追加する。

■ 監査基準の改訂に関する意見書

7月5日に公表した監査基準の改訂に関する意見書では、不正会計事案を受けた一連の会計監査の信頼性確保策のひとつとして、金融商品取引法に基づく開示にかかる監査報告書において、監査意見とは別に、監査人が「監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters)」いわゆるKAMを記載し、監査プロセスの透明性向上を図ることとした。

この記載は、2021年3月期決算から適用する。また、東証1部上場企業には、特に1年前倒ししたKAMの早期適用が期待されている。

記載事項の決定にあたっては、監査人は監査の過程で監査役等と協議した事項のなかから、特に注意を払った事項を決定し、さらに特に重要であると判断した事項を絞り込む必要がある。リスク・アプローチに基づく一連の監査の過程における協議を通じて、その記載事項を定めるものであり、この記載が経営者による開示を代替するものではない。万が一この記載を行うにあたり、未公表情報を含める必要があると監査人が判断した場合には、経営者に追加的な開示を促すことが求められる。

【経済基盤本部】

「2018年8月9日 No.3373」一覧はこちら